2021年度 目路はるか教室

3Aコース

経済・社会の血流を担う「銀行」〜うるおいある未来を創造するために〜

1977(昭和52)年卒業株式会社九州フィナンシャルグループ社長 株式会社肥後銀行頭取

笠原 慶久 氏(かさはら よしひさ)

 此の度は、目路はるか教室で普通部生の皆さんにお話しする機会を頂き、誠に有難うございました。目路はるか教室の素晴らしさは、長く世話人をしてきた同期の竹内明君から伺い、過去にも何回かお声かけ頂いておりましたが、今年、参加が実現し、とても嬉しく、かつ光栄に思います。

 授業は、できれば仕事の現場を見せてほしいということで、熊本開催も一案でしたが、現実路線として日本の金融機能が集まる日本橋界隈で行うこととし、全国地方銀行協会と日本銀行の温かいご理解の下、最初の1時間を日本銀行貨幣博物館で、後の2時間を地方銀行会館大会議室にて、実施させて頂きました。貨幣博物館は、お金とは何かがよく分かる施設で、古から今までの本物の貨幣を見ることができ、生徒の皆さんも興味深かったようです。また、地方銀行会館大会議室は、私を含む全国の地銀63行頭取が集う会議が行われる場で、普段は入れませんので、これも良い経験になったことと思います。ここが学生の授業に使われたのは恐らく初めてと思います。

 授業内容は、普通部生が理解しやすい内容としつつも、本質的なことや私の信念をお話しするよう努めました。章立ては、私や会社の自己紹介の後、「銀行の歴史と役割」「お金の計画の基本」「地方銀行の仕事と働きがい」「変わりゆく銀行の役割」の構成としました。特に、「銀行の歴史と役割」の部では、銀行の盛衰と地域の盛衰は表裏一体で、銀行の役割はお客様や地域の繁栄の手助けをすることであり、また、「銀行ノ生命ハ信用ニ在リ」という信用第一の精神を話しました。では、具体的に、信用できるとはどういうことなのか、普通部生の意見も募りながら、健全性や堅確性に加え、ESGなど、昨今の気候変動問題や人権問題に対する銀行の向き合い方についても最新動向を解説しました。生徒の皆さんには「ダイベストメント」という聞きなれない言葉が新鮮だったようです。

 また、「地方銀行の仕事と働きがい」の部では、熊本地震や豪雨災害における地方銀行の役割が多岐にわたっていることが驚きだったようで、更に、「ハモニカー」と肥後銀行で呼んでいる装甲車のようなATMカーが災害で活躍する姿に興味があったようです。

 最後の「変わりゆく銀行の役割」では、SDGsについて説明するとともに、「成り行きの未来ではなく、意志のある未来へ」として、未来がどうなるか予測するのではなく、未来をどうしたいのか考え、未来の夢を持ち、未来を自ら創造していくことが重要であることを話しました。これから成人していく普通部生にとっては、「未来は創造するもの」という言葉への共感が強かったようです。その中で、私達が地域を愛し、持続可能な社会づくりのために力を尽くしているということも知ってもらえたように思います。

 授業は一方的講義ではなく、考えながら参加してほしいと思い、私からも色々質問しましたが、皆さんから活発な意見が出て、また、皆さんからの質問も多岐にわたり、私自身も楽しい3時間を過ごすことができました。問題意識が高い普通部生の皆さんに接し、「日本の未来も大丈夫だ」、と確信を持つことができました。後日送付頂いた23枚の感想文も、皆さん一人ひとりの気持ちがこもっており、私の宝物にさせて頂きます。先輩の一人として、普通部生の皆さんの未来が素晴らしいものになることを祈っています。

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