2021年度 目路はるか教室

2Hコース

テレビは“オワコン”なのか?

1987(昭和62) 年卒業日本テレビ放送網株式会社 情報・制作局チーフプロデューサー

富永 有一 氏(とみなが ゆういち)

 この度は、第24回「目路はるか教室」の講師という大変貴重な経験をさせていただき、普通部ならびに教職員の皆様、世話人の皆様、当日参加してくれた24人の普通部生の皆さんに心から感謝申し上げます。特に、私を担当してくださった浦口先生と世話人の仮屋園先輩が、不慣れな私をきめ細かくサポートしてくださったおかげで、何とか無事に講師を務めることができました。改めて御礼申し上げます。

 私自身、普通部卒業から35年近くがたち、当時の記憶も薄れていたのですが、授業当日、待ち合わせの新橋駅で制服を着た普通部生の姿を目にした途端、懐かしい記憶が鮮やかによみがえってきたのには我ながら驚きました。授業に参加してくれたのは2年生で、まだ小学生の面影を残した幼い印象の生徒もいれば、背が高く青年っぽい印象の生徒もいて、まさしく「思春期ど真ん中」の生徒たちの姿に甘酸っぱい思いを抱き、なぜかニヤニヤしながら日本テレビにご案内しました。今年はコロナ禍での開催となったため、感染状況が悪化していた夏ごろには「本当に開催できるのだろうか、できたとしても日本テレビに来てもらうことは可能だろうか?」と不安を覚えていましたが、その後、「奇跡的」といえるほど感染状況が大きく改善し、また、会社の理解もあって、日本テレビでの開催が実現したのは本当に良かったと思っています。授業のテーマを「テレビは“オワコン”なのか?」にしたのは、若者のテレビ離れが指摘される中、実際のところはどうなのかを「テレビを見ない世代」である普通部生に聞いてみたかったのと、そうした状況の中でも、なんとか若い世代にテレビを見てもらおうと、日々、奮闘するテレビマンの姿を紹介することで、テレビ制作という仕事の魅力を知ってもらいたいという思いからでした。「テレビを見ない世代」の本音については、質疑応答の時間に聞いてみようと思っていたのですが、私が時間配分を誤り、質疑応答の時間をとれなくなってしまったのは本当に残念でした。しかし、事前に拝読した自己紹介文には「テレビは見ない」「YOU TUBEや動画配信サービスしか見ない」「スマホでSNSばかり」などといった、テレビ制作者からすると目を覆いたくなるような言葉が並んでいて、事態の深刻さを改めて認識した次第です。

 また授業では、「テレビ制作の魅力」について、私が担当している「スッキリ」で最近放送した企画のいくつかを、実際のオンエアを見てもらいながら説明しました。去年からのコロナ禍で、テレビ番組の制作には新規ロケができなくなるなどの様々な困難が生じ、「総集編」という名の再放送を余儀なくされた番組も多くありました。しかし、そうした中でもクリエーターたちは「ロケに行けない」状況を逆手に取り、出演者に自撮りしてもらったり、全編リモートロケで企画を制作したりと様々な工夫を凝らして魅力的なコンテンツを視聴者に届けたのです。こうしたテレビクリエーターの「熱量」が生徒たちに少しでも伝わったら嬉しいです。

 その後は、日本テレビ報道局の取材・放送の拠点である報道フロアやニューススタジオなどを見学してもらいました。普段、テレビで目にしているスタジオで、キャスターの椅子に座ってもらうことで、生放送の緊張感を肌で感じてもらえたのではないかと思います。

 そして最後に、普通部の3年間は自分のやりたいことに集中して取り組む、とても貴重な時期だから心から楽しんでほしいということをお話ししました。私自身、2年生のときに書いた小説が労作展で賞をいただいたことが、マスメディアを志すきっかけになったことを思い出し、自分を見つめなおす、いい機会となりました。そういった意味でも、今回、講師を務めさせていただいたことは自分にとって、意義のある貴重な経験となりました。本当にありがとうございました。

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