2021年度 目路はるか教室

2Iコース

「企業法務弁護士の様々な生き方」を終えて

1994(平成6) 年卒業弁護士(長島・大野・常松法律事務所パートナー)

森 大樹 氏(もり おおき)

 あっという間の3時間でした。目路はるか教室での講義の依頼を受けてから、「半生を振り返っても3時間も話すことはあるのだろうか?」、「我が家には小学校低学年と幼稚園に通う娘しかいない。男子中学生に向けて何を話せばいいのだろう」などと逡巡する日々が続きましたが、普通部生から自己紹介文や質問を事前にいただき、いざ24名の普通部生を目の前にすると、伝えたいことが湧き出てきて……その結果、あっという間に3時間が過ぎました。

 事前の質問では、企業法務に関する質問もいただきましたが、弁護士になりたいのでどんな勉強をすればいいのかといった将来に直結する質問も多くありました。そこで、授業ではまず、私が慶應義塾で過ごした16年間、何を考え、何をしてきたか、なぜ弁護士を目指したかなど、何一つ隠すことなく素直にお伝えしました。決して褒められることばかりではなかったかもしれませんが、ありのままの姿を伝えることが大切だと思ったからです。

 そして、弁護士になるためには必ず通過しなければならない司法試験の話や法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)、弁護士になった普通部の同級生たちの活躍ぶりも紹介しました。その中では、普通部時代は、普段は全く自宅学習していなかったものの、中間・期末試験のときだけは綿密な計画を立てて勉強をしていたこと、そのように計画的に勉強することが司法試験の勉強にも役立ったことなど勉強方法の話もしました。

 肝心な仕事の話については、企業法務とは何か、どのような分野・案件に注力して取り組んできたか、どのような事件が胸に深く刻まれているか、どんな葛藤を抱えながら仕事をしているのか、といった話に始まり、一般的な弁護士の業務にとどまらず、官公庁に出向して法案の立案を担当したこと、国会の法案審議において参考人として招致され意見陳述や答弁を行ったこと、プロボノ活動としてスマホ一つあればいつでもどこでも利用できる紛争解決の仕組み作りに取り組んでいることなどについてもお話をしました。

 目路はるか教室でお話させていただく機会を得て、改めて振り返ってみると、自分の歩みの根底にあるものは、慶應義塾で学んだ付和雷同せず、自分が信じた正しいことを諦めずに最後までやりぬくという精神、他人のことは否定せず、でも他人と違うことをおそれずに挑戦して道なき道を切り拓く自我作古の精神を抱き、微力ながらも社会の先導者となろうと努めること、そして、感謝の念を抱き、その感謝を社会に還元したいという強い気持ちを持ち続けてきたことであることを実感しました。

 授業のあとに普通部生からいただいた感想は、私が伝えたかったメッセージをとてもよく理解してもらっているものが本当に多くありました。さすが普通部生ですね。幾つかご紹介します。

 「みんなと違う道を進める勇気に憧れました」

 「僕の心に一番残ったのは『好きな所をつきつめる』ということです。」

「(特に印象に残った話は)「自分の考えをちゃんと言葉にできて、人の意見もしっかり聞ける人には自然と結果が付いてくるというお話です」

「(特に印象に残った言葉は)「自分で自分がやるべきことを考えて、自分で自分がやるべきことをやる」という言葉です」

 「今日の授業で特に心に残っていることは『感謝』という言葉です」

 普通部生のみなさんにとっては日常のことであり今は気付いていないことかもしれませんが、これから様々な経験を積んで成長していく中で、それが決して当たり前のことではなく自分がいかに恵まれた環境で育ってきたのかということに気付き、そんな自分が社会のために何ができるのか、ということを考える日がきっと来ると思います。

 みなさんのお役にどれだけたてたかは心許ないですが、いつかまたどこかで会える日を、またみなさんが社会に出てそれぞれがそれぞれの道で活躍されることを心から楽しみにしています。

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