2020年度 目路はるか教室

3Iコース

ニューヨーク州弁護士は何ができるのか?

1990(平成2)年卒業ニューヨーク州弁護士 / LINE株式会社法務部長

山本 雅道 氏(やまもと まさみち)

 「アメリカの歴代大統領で、ジェファーソン・リンカーン・クリントン・オバマにあって、ワシントン・ケネディ・レーガン・トランプにないものは何でしょう?」 私の目路はるか教室は、激戦の大統領選挙の真っただ中、こんな「あるなしクイズ」から始まりました。

 私はニューヨーク州弁護士で、「今は」LINEの法務部長をしています。ちなみに、「今は」を強調するのは、これまでアメリカと日本で7つの会社や事務所で働いてきた私にとって、来年自分が何をしているか、正直予測できないところがあるからです。

 さて、ここまで書いたところで、話したいことに比べて全くスペースが足りないことに気づきました。以下、授業内容をダイジェストでお送りします。

●普通部時代は、かっこよさげな外交官が夢。

●経済学部時代は外交官試験に専念するものの、動機がその程度なので面接で不合格。

●就職を先延ばしにするため、法学部の3年に学士入学。この時点では弁護士になる気ゼロ。

●卒業後は、安定していそうな東京電力に就職。海外留学のチャンスもあるかも。

●新入社員で配属されたのは新宿支社料金課。電気を止める仕事で、恫喝・脅迫・監禁は日常茶飯事。

●国際部に異動し、たまたま法学部出だったので、社内初の国際法務担当に。アブダビ発電プロジェクトで、アメリカ弁護士が支配する国際交渉を目の当たりにして、留学決意。

●ロースクール共通テストで全米上位5%の点数を取るも、大学時代の悲惨な成績が災いしてトップ10校から全て不合格。かろうじてVanderbilt Law Schoolに拾ってもらう。

●寝る間を惜しんで勉強し、テストでオールAを確信するも、ほとんどB。教授に抗議に行くと、「この分量だとあなた以外の人は全員C」と言われ、先が見えなくなる

●細かさと正確性を活かして、法学雑誌の編集委員に選ばれる。今まで挨拶をしても無視していた学生が、向こうから話しかけてくるようになる。

●司法試験中にパソコンがクラッシュし、すべて手書きに。全て書き終わった後に回答用紙を間違えたことに気づくが、問題番号を書き換えたら合格。

●ニューヨークのウォール街で働き始める。最初に携わったのは、日本と全く関係ないベネズエラの石油採掘プロジェクト。

●30の銀行からの要求資料を一覧にする仕事で、状況を事細かに記録。プロジェクトの遅れをこちらのせいにしようとした相手側弁護士にこのリストをつきつけ、鬼軍曹に認められる。

●金融危機で同期の約二割が解雇。私は東京オフィスに行けと言われる。

●その後は、フランスの会社の社内弁護士、金融庁・証券取引等監視委員会(黒崎!)、再度のアメリカ留学で博士号取得、ロースクールの非常勤講師など、自分でもどこを目指しているのかよくわからなくなるが、2年前にLINEの法務責任者に落ち着く。

 こんなよもやま話を通じて私がお伝えしたかったことは、以下の3点です。

●周り道かなと思っても、後になって活きてくることがある。

●英語以上に重要なのは、自分ならではの「強み」を見つけること。

●資格は単なるチケットだが、持っているとチャンスが広がる。

 学生のみなさん、私の話はいかがでしたか?授業中のジョークはあまりウケませんでしたが、約3時間の授業で寝ているひとはゼロでした。以前目路はるか教室を担当した友人から、けっこう寝てる子も多いよ、と聞いていたので、とりあえず皆さんを退屈させずに済んだのかと思います。多少説教臭いことも言ってしまいましたが、みなさんが人生に迷ったときに、「そういえばどこかでこんなことを聞いたっけ」と思い出していただけたなら、何よりの喜びです。

(最初のあるなしクイズの答えは、「弁護士資格」です。)

 

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