2020年度 目路はるか教室

2Bコース

未来の社長を目指す諸君へ

1980(昭和55)年卒業アシザワ・ファインテック 株式会社 代表取締役社長

芦澤 直太郎 氏(あしざわ なおたろう)

 普通部卒業40年の節目に、後輩に世の中のことを語り、同時に自身の半生を振り返る、貴重な機会を頂きました。関係各位に感謝申し上げます。

 普通部、塾高、法学部、そして三菱銀行(当時)への就職まで同じ道を歩んだ同期で、目路はるか教室の世話人である濱野智之君とのご縁で講師をお引き受けしました。

 私の仕事は、親の跡を継いだ創業百余年の機械メーカーの経営です。当初は工場見学の予定でしたが、コロナ感染防止のため普通部での開催に変更しました。そこで、機械や技術の話ではなく、私が社長になるまでの体験や、リーダーとしての心構えについて話すことにしました。受講する生徒の大多数が後継者ではないことが事前のレポートで判明しましたので、経営者としての話の前に、中学生が社会人になるために大切なことを語り、将来への希望を抱いてもらうことを狙いました。概要は以下の通りです。

〔1時間目〕

  • 名刺作成、交換の作法

 
生徒に手書きの名刺を2枚作製してもらう。ビジネスで使う名刺は互いの分身として大切に扱うべきものと説明。アシスタントとして随伴させた大学生の娘と私で名刺交換の実演を見せた上で、生徒には講師や他のクラスの知らない人と交換してもらう。2年生とはいえコロナで通学できなかった生徒同士の交友関係のきっかけにもなった。

  • 講師自己紹介

 
卒業後に成長し活躍できたことと対比するために、自身の普通部時代は勉学、スポーツ、同級生や先輩との人間関係などいずれにも苦しんだことを紹介。特に、内部出身者の交友関係に入れてもらうためにラグビー部に入ったこと、慶應という恵まれた環境にいることを自覚して卒業後は世のために還元すべきと説明。

〔2時間目〕

  • 大人になるイメージを色で表す

 
14歳の中学生に社長の話をするにあたり、大人になることへの期待感を伝えたかった。生徒にも考え発言してもらうことを図り、画用紙と油性ペンを配布して、好きな色、現在の自分の色、大人になるイメージの色を順に表してもらう。現在を黄色や金色など明るい色で示した生徒が多くて安堵した。大人のイメージは虹色や透明など、まだつかめていないとの答えが目立ったが、悲観的に捉えている生徒は少なかった。

〔3時間目〕

  • 会社の紹介、粉のサンプル、ボールペン配布

 
講師の会社の紹介と、社長の仕事を説明。産業用の粉砕機メーカーなので、機械の性能や効果を伝えたく、粉のサンプルを触って実感してもらう。スマホの液晶画面や電池、紙幣の印刷インクなど、身の回りの高品質な製品の原料が微細な粉からできていることを話し、その実例として当社の粉砕機でインクの原料を粉砕分散したボールペンを記念に配布。

 
社長の仕事は、自分が最も上手に機械の発明や販売をすることではなく、それらの仕事を得意とする人に活躍してもらう職場環境を築くこと、多くの社員に優しくして皆から支持されること、などと説明。

 
組織のリーダーを目指す生徒へのアドバイスとして、自分が誰かを利用したり従えようとしたりするより、多くの人の役に立てる存在となるべき。その訓練として、友達をたくさん作って仲良くすることや、小さな集団や行事でいいから世話役や責任者になって苦労とやりがいを体験することを推奨する。

 
「勉強が出来なくても社長になれるか?」の質問に対し、必ずしも成績が良いことがリーダーの条件ではないが、人生の選択肢を増やすために勉強はしておくべきと答える。

  • 組織としての社会貢献

 会社の地元の谷津干潟(ラムサール条約登録地)での清掃活動を紹介。

〔4時間目〕

  • クラス対抗かるた競技

 
当社の歴史・経営理念・仕事内容などを44枚の札に集約した「アシザワかるた」を使って、団体戦を実施。ゲームを通じて自分の会社への理解を深め、チームワークを築くことを体感してもらう。

  • 最後に

 
どんな仕事をするにも、能力や熱意よりも考え方が大切。成功の秘訣は“自分ファースト”ではなく“利他の心”であると力説して終了。

 

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