2020年度 目路はるか教室

2Aコース

大学図書館の過去・現在・未来

1977(昭和52)年卒業慶應義塾大学 経済学部教授・慶應義塾図書館長

須田 伸一 氏(すだ しんいち)

 この度は、第23回 目路はるか教室において普通部生の皆さんにお話しする機会を与えていただき、誠にありがとうございました。代表世話人の奈良文彦様から講師へのお誘いをいただいたときには、体育会理事としての経験や、専門としている経済学のことを中心にお話ししようと考えたのですが、できれば校外での実施が望ましいということでしたので、三田の大学図書館で目路はるか教室の授業を実施することに決めました。教室でのレクチャーに引き続き、2019年5月末に改修工事が完了した図書館旧館、特に建物地下の免震層を見学し、地上に戻って演説館にも寄って…という計画を立てていたところ、新型コロナウイルス感染症の広がりが予想以上に長引き、残念ではありましたが、普通部の教室での授業に変更しました。

 その結果、受講者の皆さんには免震構造について写真に基づいた説明しかできませんでしたが、代わりに慶應義塾図書館の歴史や現状、また2019年4月に訪問したアメリカの二つの大学図書館についてより多くの時間を割くことができ、深く説明することができたと思っています。私自身も、2019年4月に図書館長(メディアセンター所長)に就任したばかりですので、今回の授業の準備を通じて義塾の図書館についてより理解を深めることができました。この意味で、今回の授業は私自身にとっても非常に有益でした。

 11月7日(土)の授業当日、久しぶりに普通部通りを歩いて普通部の校舎に入りました。例年なら、週に一度、駅の反対側の大学で授業を行っているのですが、今年は新型コロナウイルス感染症のため授業がすべてオンラインになり、教室での授業は約10か月振り、少し緊張しながらスライドを写して授業をはじめました。生徒の皆さんも最初は緊張しているようでしたが、私の話を(大学生よりもずっと静かに)聞いてくれて、また休憩時間にも親しく話しかけてくれたので、気持ちよく授業を終えることができました。

 内容は、大学図書館の「過去」の部分では、図書館旧館のバルコニーから撮った写真(大正時代、遠くに海(品川湾)が見える)、田町駅のプラットホームから三田山上の図書館を臨む写真(昭和20年代)などをお見せし、「現在」の部分では、本よりも電子資料(データベース、電子ジャーナルなど)への支出が多いことや、私が知る限りでのアメリカの大学図書館の現状(図書館内での飲食が自由、24時間開いている場所がある、など)をお話ししました。「未来」については、非来館型サービスへの移行がコロナ禍をきっかけとして加速しつつあることに触れ、最後に図書館旧館の免震工事について説明しました。

 なお、今回の授業では藤田大地先生と新井先生に手伝っていただきましたが、藤田先生が経済学部ご出身で、大学時代に私の授業を履修していたことを知り、驚きました。藤田先生は普通部時代に目路はるか教室を受講され、大学では私の授業を受講し、今回、私の目路はるか教室の授業を生徒と一緒に受講されたわけですが、この慶應ならではの途切れることのない人と人とのつながり、これこそが慶應義塾の一番の宝だと思います。私自身も、図書館長になる前に体育会理事を務めていたとき、普通部出身の先輩・後輩の方々に何度も助けていただきました。

 普通部生の皆さんにはこれから様々な可能性が開かれています。失敗を恐れず、好きなことにチャレンジしてください。困ったときには、慶應義塾の先輩・後輩がきっと手を差し伸べてくれることでしょう。皆さんの今後の活躍を期待するとともに、心から応援しています。

 

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