2019年度 目路はるか教室

3Iコース

「法律がない社会」をイメージしてみましょう 〜法律・法律家の役割とは〜

平成9(1997)年卒業大西綜合法律事務所

大西 雄太 氏(おおにし ゆうた)

 今回、皆さんに対してお話しするにあたって、まず、「法律がない社会」をイメージしてもらったのは、皆さんが当たり前のように平和に生活している前提として、法律があり、また、法律家が活躍しているということをあらためて認識して頂きたかったからです。

 そして、裁判を傍聴して頂くことにより、実際に法律が活かされ、また、法律家がそれぞれの立場で動いているところを観察して頂くということはもちろん、法律によって裁かれている方やその家族、その法廷を傍聴している他の一般の方々がいて、それぞれの思いを抱いていること、そのような法廷が裁判所の中にはいくつもあり、傍聴しようと思えば裁判所の1階で事件を検索できることなど、イメージしてもらった「法律がない社会」ではなく、「法律がある社会」の実際の現場を見て頂くことを目的としました。

 社会は色々な人間が色々な目的で色々な動きをする中で成り立っており、良いことも、悪いことも、普通のことも起き、また、良い人も、悪い人も、普通の人もいます。法廷で見てもらうような「事件」はある意味では「普通ではない」ことかもしれませんが、人生は、いつどうなるか、誰に何をされるか、はたまた自分が何をするかさえ分かりませんので、とにかく、社会を知るということが重要だと、今になって、私は感じております。その一つとして、裁判制度の意義や限界を考えることは意味があると思っています。

 法廷傍聴後には、「社会人」=社会で自分の力を役立てる人、「社会」=社会の仕組みを知ること、「自分の力を役立てる」=自分に向いていることを探す=自分を知ること、などとあたかも当然のようにお話してしまいましたが、私としても永遠の課題だと思っています。

 私は、皆さんが法律家を目指して頂けるのであればそれはそれで嬉しいですし、全く異なる道を目指されることも同じく嬉しいです。大事なことは、社会的にとても恵まれた環境にいる皆さんが、普通部で、また、今後普通部で学んだことを生かしながら、社会や自分のことを知って、社会でその自分の力を生かせる人間、まさしく「社会人」になり、社会に貢献していくことだと思っています。私も、これを機会にもう一度その気持ちを忘れずに頑張っていこうと思います。悩んだら「ノブレス・オブリージュ」の精神を思い返しましょう。

 大したことはお話できませんでしたが、皆さんが今回の経験を何らかの形で生かして頂けるのであれば望外の幸せです。

 このような機会を頂けましたこと、ご関係者の方々を含め、心より感謝申し上げます。

 

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