2017年度 目路はるか教室

2Dコース

新たな局面にチャレンジする力『練習は不可能を可能にする』

昭和51(1976)年卒業岡谷電機産業 株式会社 上席執行役員 経営企画室 室長 / 慶應義塾体育会弓術部 三田弓友会 専務理事

本間 勤 氏(ほんま つとむ)

 普通部から大学まで弓術部10年間で学んだ「練習は不可能を可能にする」すなわち「徹底的にやること」が銀行員としてフランス、ロンドン、香港という国際金融マーケットで仕事をして、さらには銀行を卒業して製造業に移り新規事業の立ち上げなど新しい局面に立ち向かうときに自分の一番強い力になりました。

 慶應義塾の体育会の精神、弓術部での生活、国際金融市場での業務、電子部品業界での企業経営、一見ばらばらに見えるのですが、課題に直面したときに、解決にむけて仮説をたてて行動を起こしその結果から仮説を検証し、さらに次の方策へ結びつける活動のサイクルは共通しているのです。この点を体育会の歴史や私の活動の歴史をご紹介しながら、普通部の皆さんと一緒に考えたい、というのが今回の趣旨です。

 小泉信三先生は体育会創立70周年の記念式典で有名な「スポーツが与える三つの宝」という講演をされました。「三つの宝」とは「第一に練習の体験を持つと言うこと、練習によって不可能を可能にする体験」「第二にフェアプレーの精神」「第三に友」です。普通部2年生の皆さんはこれからの慶應義塾の生活のなかで何度もこの「三つの宝」に触れることがあると思います。その人生の早い時期にこの点に触れておくことは決して無駄ではないと考え、小泉先生の講演録を皆さんで音読しました。今回のクラスの中には運動部に所属している人も所属していない人もいましたが、この「三つの宝」は決して運動だけに当てはまるものではありません。文化部の活動でもそれ以外の課外活動でも何かに友達と挑戦して一生懸命作り上げていく、成し遂げていく過程でつかみ取れるものと信じています。

 私は27歳の時に初めて海外生活をすることになりました。その最初にフランスの欧州経営大学院INSEADに留学することになりました。普通部、塾高、大学と日吉で弓術部活動に明け暮れた私にとっては、自ら望んだ道とはいえ、初の異文化体験、英語・フランス語でのグループワークは当初はとても高いハードルでしたが、塾高時代のインターハイ優勝を成し遂げたときの練習、大学時代にトップリーグへの復帰を成し遂げた時の練習とその成果を思い出し「不可能はない」と信じてぶつかりました。フィールドの違う挑戦とはいえ、「練習は不可能を可能にする」を信じて英語、フランス語とMBAの授業に挑戦し所期の目的を達成できたのは、やはり、10年間の弓術部生活のおかげといえます。これがなかったら海外留学とその後の国際金融マーケットでの仕事はなしえなかったと思います。

 今回のプログラムの最後に皆さんと日吉の駅を超え銀杏並木を歩き、今年で立て替えになる記念館を横に見ながら、マムシ谷へ降りて一番奥の「志正弓道場」まで歩いて、今年8月に竣工した慶應義塾体育会弓術部創部125年事業の一つである新生「志正弓道場」を見学して、少しだけ弓術の体験をしていただきました。その折、普通部出身の弓術部員の模範演技を見ていただきました。彼らも皆さんを新道場へお迎えして喜んでいました。

 志正弓道場は、前回は1966年に建てられ昨年2016年に50年の歴史を閉じ、今回、塾のご支援とOBやその他関係の方々の篤志で建て替えが実現しました。こうした「社中一体」の精神の結露である志正弓道場を見学してもらいました。教室でお見せした弓術部125年記念のビデオにあった明治初期からの伝統がこれからもあの道場で受け継がれて行くのです。

 今回の私の授業では、なにかを学んでいただくというよりは慶應義塾体育会の気風、これが人生を歩む上で一人一人に三つの宝というものを与えてくれるのだということを少しでも感じ取っていただければ幸いです。

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