2024年度 目路はるか教室
3Dコース
「在宅医療の本質」は、人の話を「聴く」こと
東中島クリニック 院長
中島 剛 氏 (ナカジマ タケシ)

「目路はるか教室」のお話しをいただき、自分を振り返る中で、医師を志すきっかけとなった慶應病院での入院経験が、皆さんと 同じ普通部3年生の時であったことを思い出し、不思議な縁を感じました。呼吸器専門医としてキャリアを積んで四半世紀になりますが、「在宅医療」に関わり始めて、まだ10年ほどです。今回改めて勉強し直し、その奥深さを全身全霊で皆さんにお伝えしました。訪問診療に同行し現場を見てもらうことが難しいため、当日は講義だけでなく、在宅医療をテーマにした映画『ピア』を少しだけ鑑賞していただきました。幼稚舎出身の俳優、細田善彦さん演じる医師が、今ブレイク中の女優、松本若菜さん演じるケアマネジャーに怒られながら、患者さんも含め、在宅医療に関わる全ての職種が、平等な仲間(ピア)であることを学んでいくストーリーです。
患者さんに寄り添い、多職種連携が求められる医師には、コミュニケーション能力、その中で も、特に「聴く力」が重要です。人は誰でも、自分の話をしっかり聞いてくれる人と一緒にいたいと思っています。決して、答えや説得を求めているわけではありません。癌末期の患者さんも、認知症の患者さんに対しても、否定せず、「和顔愛語」の精神で、その人の発する言葉の真意を 理解しようとする熱意が必要であることを強調させていただきました。最後のグループワークでは、医師でも難しい訪問診療の症例検討を行いましたが、皆さんと活発な意見交換を行うことができました。患者さんの人生と向き合う在宅医療だけでなく、どの職業でも、成功や失敗、挫折などの経験が大きな糧となります。興味を持ったことは、躊躇せずにどんどんチャレンジしてほしいと思います。
このような素晴らしい教育プログラムを経験できる生徒さんたちをうらやましく思うとともに、自分も参加させていただき、ご尽力いただいた委員の方々や教員の皆様に、心よりお礼申し上げます。