2024年度 目路はるか教室
2024年度 目路はるか教室
1年全体講話
労作展で学んだこと、慶應義塾で学んだこと −AI 時代に不可欠な力−
1982(昭和57)年卒業慶應義塾 常任理事 慶應義塾大学、看護医療学部・大学院健康マネジメント研究科教授
山内 慶太 氏(ヤマウチ ケイタ)

まず、私が普通部で没頭した労作展、そして塾高の福澤研究会での体験を紹介しました。
労作展では1、2年生では図学に取り組み、手描きで複雑な立体等を描き続けました。3年生 ではコンピュータ図学に取り組みました。当時はペンが左右に、紙がドラムで前後に動くだけの XYプロッターしかありません。立体から投影面への座標の変換式をはじめ全て理論を考えプログラムを書く必要がありました。今は、モニター上で見たい角度からの図を自在に描けるCAD が発展していますが、当時は過渡期であったからこその面白さがあったと思います、図面から立体のイメージが浮かぶ力もつきましたし、CADの根底の原理への理解も深まりました。また、福澤研究会では、福澤先生の疑いの精神や歴史研究における実証的な姿勢の大切さを学びました。
次に、近年ブームの生成AIについてはChatGPTが出力した労作展についての説明の文章を例に、またAIの得意なデータ分析については私が関わって来た研究を例にして、AI時代に大切な力とは何かを考えました。
ChatGPTの出力は一見もっともらしく見えますが、まだ成熟途上の技術ですので、不十分な記述や誤りが混在しています。その理論を理解すれば当然のことですが、私達には、皆が当たり前と受け止めているものに常に本当にそうだろうかと疑って考える福澤先生流の見方が益々大切になっています。このことについては質疑で、フィールドノート等、普通部が日常大切にしている自分の目で観察する姿勢ともつながることを補足しました。
最後に、今はAIの過渡期にあると指摘しました。私の労作展の頃の図学と同様で、未成熟な部分があるからこそ根底の原理も、その技術の表裏も考えることが出来ます。そのことを意識しながらAIを活用していくと、将来も常に過渡期の時代に生きる人として、その時代の新技術を面白がりつつも機械に使われないという感覚、自分の主体性を発揮しながら活躍できる人になると信じています。