2023年度 目路はるか教室

2023年度 目路はるか教室
2年全体講話

多様性の米国と赤ちゃん神経科医療研究

1987(昭和62)年卒業Associate Professor of Pediatrics and Neurology, The Warren Alpert Medical School of Brown University Director of Fetal Neonatal Neurology, Pediatric Neurology, Hasbro Children’s Hospital

樽井 智 氏(タルイ トモ)

 私は米国ブラウン大学医学部で小児神経科医、そして胎児新生児神経科プログラムのディレクターとして、出生前胎児診断、新生児神経集中治療の専門医として赤ちゃんのケアに従事している。また胎児脳画像解析を使って胎児脳構造異常、妊婦さんの健康が胎児脳発生に及ぼす影響を研究している。23年のアメリカ生活と小児神経科医として様々な人種、社会文化的背景、そして発達や神経学的にも多様な子供たちと家族と深く関わってきた。その経験から強く感じたのは、胎児期そして乳児期が人の一生の健康を決める大切な時期であること。赤ちゃんをよりよくケアすることで健康を促進し、病気を予防できる可能性。赤ちゃんそして子供には人種、性別、性格、行動、社会的背景、健康と病気、成長や発達の全てに多様性があること。アメリカで生き、小児医療に従事して強く感じたのは人々の多様性、独立性、そして柔軟性だった。それらがアメリカ社会の創造性と摩擦の両方を生じている。
 世界の縮図であるアメリカ社会の多様性を感じる一方、医療を通してみると、赤ちゃんと親御さん、そして家族との関わりは、どの国、どの民族でも驚くほど似ている共通性を持つ。生きる喜び、悲しみ、それは人として共通の感情であり、その共通性をもってすれば、多様性があっても摩擦よりも創造性を大きくできるのではないだろうか。
 私の普通部生活を振り返ると、そこには自由、時間、そして自主性があったように思う。その最たるものが労作展であった。私の個人的な普通部生の皆さんへの願いは、普通部にいるこの時間を大切に、かけがえのない自分を大切に自他共に尊び(自尊)、自分で考え自分の力で立てるように(独立)準備してほしい。そして困難にぶつかった時には、道はいくつもあること(多様性と柔軟性)を忘れずに、できれば、摩擦よりも創造する道を選んで歩んでほしい。

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