2023年度 目路はるか教室
1Fコース
『好きなこと 得意なことで まだまだ生きていく』
作編曲家
山下 宏明 氏 (ヤマシタ ヒロアキ)
普通部の校舎を訪れたのは卒業以来なので実に33年ぶりということになる。その立派になった外観の変わりように度肝を抜かれたが、出迎えて下さったランボーこと池田先生の昔と全くお変わりない姿にホッとした。
第一部は作曲家という仕事について。歌、映画、CMソングはもちろんのこと、携帯電話、電車の発車ベル、電子レンジに至るまで、世の中に溢れているあらゆる音楽は全て誰かしらの手によって作曲されている。僕が実際に手がけた「海の声」や「TOKYO2020開会式」の創作過程に話が及ぶと、みんなの姿勢が前のめりになってくるのを感じた。
普通部生は想像していたよりも遙かに人懐っこくピュアで、自分もこんな感じだったのかなあ、とぼんやり昔のことを思い出す。
僕の普通部時代はというと、ちょうど一年生の頃、クラスメイトにシンセサイザーを2万円で譲ってもらったことが全ての始まりだった。当時流行っていたドラクエ、FFといったゲームの音楽を夢中になって耳コピするようになった僕は、大学を卒業する頃になるとオーケストラの音までコピー出来るくらいの腕前になっていた。一体何の役に立つのかもわからないその特技が、実は今の作曲家という職業に繋がっている。
第二部ではそんな僕の特技であった耳コピを実演。軽いクイズ形式にしてみんなにも参加してもらう。「あつまれどうぶつの森のテーマ曲はいくつの楽器が鳴ってる?」「答えは5つ。5つの音色が聞き取れればこの曲は再現出来ることになるね」「じゃあポケモンGOのオーケストラは・・・・50個?」
壮大なシンフォニーも実はシンプルな音の積み重ねで出来ている。みんなの得意が仕事になるとしたら、それは日々の積み重ねのずっと先にあるはず。好きなことが見つからない?好きなことは必ず経験の中にあるものだ。たくさん経験して見つけた好きなことには熱を持って取り組むこと。一番大切なのは今。あとは友達。どんなきっかけをくれるかわからないからね。第三部はそんな話で締めくくった。
教室終了後、数名の生徒からサインを求められた。慣れない手つきでひとりひとりに書きながら、せめてそのサインに価値が出るよう僕も頑張っていこうと思った。