2021年度 目路はるか教室

3Cコース

2030年に向かって~公認会計士ってどんな仕事?~

1981(昭和56)年卒業日本公認会計士協会常任理事

新井 達哉 氏(あらい たつや)

 第24回目路はるか教室にて、慶應義塾普通部という私にとって非常に思い出深い母校においてこのような貴重な機会をいただき、通部の教職員および関係者の方々、世話人の皆様にこの場をお借りし厚く御礼申し上げます。また、数あるテーマの中から私の講義選び、参加してくれた3年生23名の皆さんにも感謝申し上げます。

 このお話を普通部時代の先輩からいただいた時には、正直なところ「私が適任なのか」、「何をお話すればよいのか」といったことで少々悩みましたが、このような機会をいただいたのも何かのご縁だと考え、普通部生に今後の自分の人生のために何か役立つことをお伝えできればと思い、引き受けさせていただきました。

 私は普通部からの10年間、慶應義塾にお世話になりました。大学在学中の1987年9月に当時の公認会計士第2次試験に合格し、1988年3月卒業と同時に大手監査法人に入所。公認会計士業界に身を置き、既に34年が経ちました。この間、バブル崩壊、金融危機、ドッドコムバブル、リーマンショック、大手企業の不正会計事件、大手監査法人の解散等々、いろいろなことがありました。私はこれらの世の中の動きに公認会計士として直面し、様々な対応をしてきました。これらの経験を踏まえ、普通部を卒業してちょうど40年となった年にこのような機会をいただいたことに感謝し、普通部の後輩諸志に「2030年に向かって 〜公認会計士ってどんな仕事〜」というテーマで、公認会計士を知っていただくと共に10年後の自分の姿を考えていただけるような講義を心掛けました。

 今回の準備に際し、事前に受講される23名の方々からの自己紹介文をいただきました。この中には皆さんの日々の活動に関するコメントや公認会計士という名前は聞いたことがあるがよくわからないといったコメントが並んでいました。別のアンケート調査の結果においても公認会計士の業務内容については一般的によく知られていないということを認識していたため、如何に普通部生にわかりやすく公認会計士の業務内容を伝えるか、さらにそれが今後の皆さんの職業選択の参考になるかという観点での講義を考えました。

 講義にいただいた時間は3時間。30分程度前後しても構わないとのご指示でしたので、基本的には3時間を目途に皆さんに公認会計士に興味を持っていただく講義内容を考えました。講義の構成としては、1)自己紹介、2)公認会計士業務等の紹介、3)有価証券報告書を使った事例研究、4)不正事例の解説と質疑応答、といった内容で2回のお休みを入れながら進めました。

 講義を始めると、自己紹介の後、公認会計士業務の紹介等については座学として皆さんに理解していただけきましたが、皆さんの意識が次第に高まっていく雰囲気を感じていました。特に後半の有価証券報告書を用いた事例研究と不正事例の解説については、黒板に投影・記載した資料を皆さんが食い入るように見ていた姿が非常に印象的でした。これらは、私が現在担当している大手小売業の事例と過去に実際に私が対応した不正事例の解説でしたが、このような生々しい内容に感度を上げて聞いてもらえたと思います。さらに、不正事例に関する質疑応答においては、このような事態にどのように対応すべきがという私からの質問に対する皆さんからの意見・回答が非常に鋭く、的を得たものとなっていたことにも驚きました。講義の最後に監査業務における基本的な考え方を説明しましたが、これは課題・問題点の発見から事実をどのように把握・認識し、その解決方法を検討、さらに改善行動を促すというサイクルになっており、それを進めるソフトスキルの重要性も理解いただけたのではと思います。

 今回の講義では普通部生のポテンシャルの高さを実感するとともに、今後、社会へ飛び立つ皆さんにとって何か迷うこと、辛いこと、厳しいことがあったときに今回の講義を思い出していただき、皆さんにとっての何かの糧に、勇気になれば幸いです。

 最後に、皆さんとまたどこかでお会いできることを楽しみに皆さんの将来に期待しています。頑張れ、普通部生!

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