2020年度 目路はるか教室

2Jコース

突破力

1995(平成7)年卒業株式会社 山川出版社 代表取締役社長 / ラグビー元日本代表

野澤 武史 氏(のざわ たけし)

 テーマは「突破力」としました。私にとって突破力とは「小さな行動の集積」です。世界一のラグビー大国ニュージーランドには「アクションは常にリアクションを叩きのめす」という諺があるほどです。人は「判断、決断、実行」という過程を経て行動を起こします。そこで大切にして欲しいこととして①興味関心に正直になる②100−0思考に陥らない③熱意と使命感を持って人と接する、を挙げました。

 私自身の経験から21歳で日本代表に選出された後、思うようなプレーができず思い悩んだ期間がありました。その時の失敗体験から学んだ①目標だけでなく目的を考える②自分の物差しで生きる③スモールアクションを積み重ねる、についてもお話しさせて戴きました。

 授業では話を聞くだけでなく、2回のグループワークで頭を整理しながら、生徒の方全員に「私にとっての突破力とは」を言語化・発表して戴きました。また、オンラインツールを使い、現在一緒にスポーツを止めるなを推進している元京都大学アメリカンフットボール部森田鉄平さん、元バレーボール日本代表横山雅美さんにもお話を伺う機会を設けました。活躍の場を世界に求めたお二人の話は大変刺激的だったのではないでしょうか。

私が現在の活動に至った経緯

 私は日本ラグビーフットボール協会のユース強化に従事する中で、全国で10年にわたり毎年約3,000人の選手を対象にタレント発掘活動を続けてきました。その中で「生まれた環境やチームによっては、次のステージで自分の好きなことを続けられない人もいる」ことを知りました。

 また、今年5月にSNSを用いて自分のプレーをアピールし、次のステージでラグビーを続ける機会につなげるプロジェクト「#ラグビーを止めるな2020」でも、強豪校ではなくラグビーが盛んでない地方の中堅チームの選手が、まさにピンチに陥っていました。「これは何か仕組みを作り、彼らの受け皿を作らないといけない」との思いで行動を起こしました。「不条理」「機会の平等」が私のスイッチだったのだと改めて気づきました。

 普通部時代、理科の授業でお世話になった加山先生が「アンテナ、立ってますか?」と授業のはじめにいつも問いかけられていたことを思い出します。当時は、その意味はよく分かりませんでしたが、常に心の関心に目を向けておけ、という意味だったのでしょう。ぜひ、皆さんも心の声を聞いてください。皆さんのスイッチはどこにありますか?

なぜ突破力の話をしたかったか

 慶應生は大変恵まれています。スポーツの環境一つとっても、進学を気にせず没頭することができます。でも「恵まれていること」は時に行動を鈍らせます。いつかやればいいや、誰かがやってくれるだろう。そんな心持ちでも、慶應生には生まれ持った能力と環境のアドバンテージで、その場を乗り切れてしまうことがあります。僕が担当しているユース世代の子たちは、中3ともなれば自分の人生プランについて考えます。どの高校でラグビーをするか?将来どうなりたいのか?そのため、親元を離れ大変遠くの学校に進学することがあったり、時には「せざるを得ない」という選択肢を取ることも珍しくありません。

 では普通部生はどうあるべきでしょう?

 私は、ゆっくり時間をかけて自分の夢を掘り下げてほしいと思います。そのために、自分のアンテナに敏感に、スモールアクションを繰り返して欲しい。皆さんの前向きな挑戦には、たとえその道が困難だとしても、手を差し伸べてくれる仲間や大人がきっと周りにいるはずです。ぜひ、そんな仲間と自分を信じて普通部生活を全力で楽しんでください。

 いつかご自身の使命感に出会えるはずです。まさにそれが、皆さんの「突破力」に繋がると信じています。

 

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