2020年度 目路はるか教室

2Fコース

次代を担う皆様へ

1990(平成2)年卒業目黒通りこどもクリニック 院長

藤田 秀樹 氏(ふじた ひでき)

 この度は、目路はるか教室の講師という大変貴重な経験をさせて頂き、参加してくれた普通部生の皆様、先生方、世話人の方々に心から感謝申し上げます。今回の準備中、中学2年だった時から今までの人生を振り返りながら、自分自身と向き合い、将来どう生きていくべきかを思索する有意義な時間を過ごさせて頂きました。

 事前に普通部生の自己紹介文を熟読し、興味が多岐にわたる印象を受けたので、一先輩としての思いを様々な角度から伝える事にしました。やや抽象的な話になり、中学生に響くだろうかと心配しておりましたが、後で頂いた感想文を拝読し杞憂に過ぎなかったと分かりました。私が伝えたかった事は優秀な皆様に届いたものと確信しております。

 数十年前は、雑誌、テレビ、ラジオ等から必死に知識を得ていましたが、この20年ほどのインターネットの進化で状況が劇変しました。trueかfakeかは別として国内外問わず知りたくない情報さえも手に入るほどの情報過多の時代となり、結果的に価値観も多様化しました。インターネットに限らず、言わばテクノロジーの勇み足のような状況に人類が追い付けていないように感じていましたが、現実的に人類が新たなテクノロジーを生み、急激に積み重ねているわけで、需要者こそ常にキャッチアップし続ける責務があると思う機会が多くなりました。将来どのような分野で活躍するにしても、溢れる情報や最新の知識を常にアップデートし、的確に分析して利用するための論理的思考能力が、益々要求されるだろうと推測します。

 入手出来る知識の量のみならず質も飛躍的に向上し、仕事内容も複雑化する中、全ての職業に当てはまるわけではないと思いますが、1つのタスクを1人だけの知識量、技量、才能だけでこなすのは限界があります。複数の“知”を効率的に組み合わせて処理する能力を身に着けるため、視野を広げてほしいと思います。視野を広げるには、突き抜けた能力を育み、知識量を増やす事も大切ですが、それだけではやや不十分です。自分自身には無いあるいは想像も出来ないような“知”を有する他人の言葉を傾聴し、あるいは様々な媒体を利用し、適切な情報を抽出する能力を備える必要があります。周りにもいっぱい、“おもしろい”人いますよね。

 社会に出て問われるのは、物事を迅速に、的確に処理する力量です。また、論理的思考能力が求められるのは理系科目に限った事ではなく、全ての科目でその能力を磨く訓練をする必要性についても今回お話ししました。部活の事でも、勉強の事でも、日常生活の事でも、生じたどんな些細な疑問も放置せず論理的に解決するように心がけ、そのプロセスを体に浸透させる癖をつけることが重要と思います。

 論理的思考により自分なりの結論を出すためには、常に筋の通った軸、信念を持つ必要があります。そのために、絶対評価する習慣が大切です。100m走の10秒の“壁”が長く日本で破られなかったのも、消費税増税で消費が落ち込むのも、COVID-19の感染者数の増減に一喜一憂するのも、ある意味相対評価の癖が影響していないでしょうか。多数の人の意見がこうだから、ではなく、いかなる状況でも自らの基準を基に頭を使って判断していただければ嬉しいです。皆さんには出来るはずです。

 世の中で一番難しいタスクは、実は当たり前とされている事を当たり前に行う事だと常々感じます。ミスが許されないからです。そのためにしっかり準備し、リスクヘッジする意義についても触れました。当たり前の事=簡単にこなせる事、という意味ではありません。学生時代の学びや遊び、多くの人との関わり合いから個人のレベルを向上させ、自分の中の“当たり前”のレベルを高める事が、ひいてはより困難な課題に将来直面した際に必ず役立つものと信じております。

 今後皆さんが格致日新して御活躍されることを、心から期待し、応援しております。

 

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