2019年度 目路はるか教室

1Fコース

日本医療の国際化へ向けた挑戦

昭和59(1984)年卒業国際医療福祉大学 医学部整形外科

石井 賢 氏(いしい けん)

(はじめに) 先日は「目路はるか教室」で母校の後輩である25名の普通部生に三田病院にお越しいただき、交流の機会を得て大変光栄でした。自分も普通部生に戻った気持ちで、皆さんと大変楽しい時間を過ごす事ができました。有難うございました。

 本教室の趣旨は、〝日本医療の国際化へ向けた挑戦〟と題して、病院見学と講義を通じて、日本医療の現状と今後ならびに国際性の重要性を知ってもらい、将来の日本を担っていく皆さんに何かを感じていただく事としました。

(病院見学) 三田病院施設内の外来診察室、CT室、リハビリテーション室、手術室、入院施設等を順番に見学いただきました。施設見学では、医療系TV番組でも馴染みのある手術室とCT室が大人気でした。手術室では手洗いや医療機器を紹介し、実際に脊椎手術をしている現場を見てもらい、手術の緊張感やチーム医療を肌で感じていただきました。放射線室ではCT撮影の現場と画像作成までの工程を見学してもらいました。病棟のVIPルームも人気で、〝高級ホテルのスイートルーム並の豪華さだ!〟〝1泊17万円は高い!安い!など〟意見は様々でした。

(講義概要) 整形外科を中心とした病気と治療全般、教育の実際、本医療が抱える問題点、世界から観た日本医療の現状と今後、医療ツーリズムや国際化の重要性について紹介し、医療の国際化へ向けた挑戦として国際医療福祉大学が実践している教育と治療について触れました。近年の中国をはじめとするアジア諸国の医療の発展と国際化は急速で、目を見張るものがあります。日本は国際的にも高い医療水準を維持してきましたが、超高齢社会、少子化、医療費の高騰、地域医療の過疎化、国際化の停滞等を背景にもはやアジアの中心でなくなりつつあります。国際病院評価機構(JCI)という医療の質と安全において国際標準を満たす機関の認証病院は、アラブ216、サウジ101、中国97、タイ69、インド40、インドネシア31、イスラエル29機関で、日本は三田病院を含むたったの28機関しかありません。また、上場企業によるタイのいくつかの有名病院では日本にもない最新医療機器が導入され、タイだけでも欧米を含む海外から年間300万人以上の患者が訪れます。これらの現状を目のあたりにすると、医療ツーリズムにおいて日本は完全に出遅れ、今後日本がアジアの中心を担っていくためには、医学教育・医療水準の向上・更なる国際化について戦略的に進めていく必要があります。2017年4月、国際医療福祉大学は本邦では約40年ぶりとなる医学部を新設しました。最大の特徴は、1学年の定員140名のうち20名は東南アジアなどの政府機関や大学の推薦による海外留学生特別枠(国籍はモンゴル、ベトナム、ミャンマー、ラオス、タイ、フィリピン、中国、韓国、カンボジア、マレーシア、アメリカなど)で、1—2年生時には全ての授業を英語で行います。また、アクティブラーニングを取り入れた国際標準の医学教育が実施されています。このような医学教育は本邦初の試みで、彼らが将来どのような能力を学術や臨床現場で発揮してくれるかは未知数ですが、国籍や人種を超えたALL JAPANの意識を持ち、今後の国際化と医療発展に貢献してくれるものと期待しています。また、我々整形外科では、世界トップクラスの最小侵襲治療とCT/AR(拡張現実)ナビゲーション等の最新技術を用いた手術を実践しています。2020年4月には、それらに加え本邦初となる10ヵ国語に対応する国際性豊かなアジアのハブ病院となる成田病院を開院します。将来の日本を考えた場合、その国際化は必要不可欠で、これは医療に限ったことではありません。皆さんはまず最低限のコミュニケーションツールである使える英語をマスターして下さい。そして、将来は国際性を重視し、狭い日本に留まらず是非世界へ向けて挑戦をして下さい。

(おわりに) 教室を終えた後に、皆さんから感想文をいただき、大変嬉しく思いました。25人全員が教室を楽しみ、私のレクチャーを真剣に聞いてそれに対して様々な感想を書いてくれました。日本医療における現状と危機感を感じてもらい、今後日本が国際化に向けてすべき事を皆感じてくれたと思います。

 私は1975年に幼稚舎に入学し、普通部、塾高、慶應医学部を経て、2017年まで慶應大学病院に勤務し、42年間に渡り慶應義塾で学びお世話になりました。そして新たな夢に向かって、次世代の医学教育と国際医療の実践に挑戦する国際医療福祉大学という新天地で、将来の日本医療の更なる国際化のために尽力しています。皆さんには輝かしい未来が待っています!是非、壮大な夢を持ち、世界で活躍できる先導者となってください!

 最後に、教室をご準備・引率いただいた普通部教職員の方々、ご協力いただいた三田病院整形外科 中山政憲先生、高橋慶行先生、秘書の安室薫さん、さらに各部署のメディカルスタッフと事務の方々全員に深く感謝申し上げます。

 

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