2018年度 目路はるか教室

1Dコース

「マンションに住むということ」

昭和51(1976)年卒業株式会社 東急コミュニティー

持田 一夫 氏(もちだ かずお)

 今回私はマンション管理をテーマに、当社の研修施設を使ってお話しさせていただきました。管理人さんがいつも一生懸命掃除していることは知っているが、体系だった知識のない生徒さんにどこまで理解してもらえたか、正直不安な気持ちもありますが、何か一つでも心に残ることがあれば嬉しく思います。

 全体を三部構成とし、第一部ではマンションに関する基礎知識を学んでもらいました。権利関係はどうなっているか、専有部と共用部の関係について、マンション自治の仕組みなど一年生には少しハードルの高い内容でしたが、皆さん熱心に耳を傾けてくれました。

 第二部は、実際に当社の管理人が受ける実技研修の体験受講です。給排水・エレベーター・清掃・消防設備の四班に分かれ、当社の研修担当講師陣の指導を受けました。「蛇口を捻るとなぜ水道水がでる」「エレベーターが落下しないのはなぜ」など「当たり前」すぎて普段考えたこともない事柄を成り立たせている仕組みや工夫に気付いてもらえたらという思いでプログラムを組みました。

 第三部は模擬理事会で、「ペット」「震災時対応」の二つのテーマに分かれて話し合いました。ここで大切なことは、正解探しではなく、自分とは異なる意見にも真摯に耳を傾け、皆が納得できる答えを見つけ出そうという姿勢です。知識がないので苦労はしていましたが、たいへん熱心に取り組んでくれました。

 ペット問題の二班のうち一班はペット解禁、もう一班は原則ペット禁止の方向で議論がまとまったようです。震災対応問題二班のうち一班は防災備蓄品を充実させる方向、もう一班は体の不自由な方の避難に焦点を当てた議論がなされました。

 このように「正解は一つではない」ということがこのパートのテーマです。マンション管理の現場では、人口減少、高齢化の影響がすでに現れ始めています。マンションが将来の日本社会の縮図になっていると言ってもよいでしょう。困難な問題に直面しても、皆で協力し知恵を出し合って、少しでも良い答えを導き出していく、今日の経験を通じて皆さんがその大切さに気付いてくれることを願っています。

 最後に、皆さんからの質問に当日十分に答えられなかった点について補足します。

 まず、マンションと戸建ての比較です。マンションの良い点は、利便性・安全性・防犯性・気密性など数多くありますが、気を遣わなければならない点もあります。戸建てに比べ隣人がより近くにいるので、騒音・振動・水漏れなどには注意を払う必要があります。また、自分で決めてできることと、組合全体の総意で行わなければならないことを常に意識する必要があります。

 一方戸建てには、そういった煩わしさはない反面、すべて自己責任で行う必要があります。当然、どちらが良いということはないのですが、多くの方にとって、自分が住むとしたらという観点で、自分の将来の住まいを考える非常に良い機会になったのではないかと思います。

 もう一つは、良いマンションとは、という質問です。駅からの距離などの物理的条件の他に、適切な管理がなされ、良い状態で維持されているかという観点も非常に重要だということを付け加えておきたいと思います。

 社会インフラ機能の一部を担うマンション管理業の重要性は今後さらに増していくものと思いますが、「自己紹介文」を読むと、皆さんがマンション管理という言葉から想起するのは、「管理人さん」止まりであるということがよくわかりました。この日の体験がマンション管理に対する理解を深める一歩となり、皆さんが将来コミュニティー形成の良き担い手となってくれることを期待しています。

 また、マンション管理会社がどのような役割を果たしているのか、業界をあげてもっとアピールしていくことが必要だと強く感じ、私たちにとっても気づきの多い一日となりました。

 24名の生徒さんと、お世話になりました鎌田先生、庭井先生に改めて御礼申し上げます。

 

前の講師を見る


2018年度トップに戻る


次の講師を見る