2018年度 目路はるか教室

1Aコース

自分で判断するということ ―私の経験から―

昭和43(1968)年卒業大日本印刷 株式会社 専務執行役員

峯村 隆二 氏(みねむら りゅうじ)

 今年、普通部卒業50年を迎えた私にとって、このような貴重な機会を与えていただきましたことに、心より感謝いたします。

 とはいえ、声を掛けていただいた同級生の水野正望君から、「『日路はるか教室』は、単なる職場紹介ではなく、自分の〝生き様〟を語る場なんだよ」と聞かされ、正直、テーマ選びに迷いました。

 でも、まずは私がどんな会社に勤務しているかを知ってもらうべく、大日本印刷の五反田ビルに集まっていただき、1時間程かけて「印刷の過去・現在・未来」を見学してもらいました。書籍・雑誌の印刷から始まり、紙容器、各種フィルム包材やペットボトル、床や壁の建材製品、ICカード、光学フィルム、半導体用フォトマスクなど、皆さんが印刷に抱いていたイメージは変わったと思います。感想文のほとんどに「紙に印刷するだけだと思っていましたが、印刷技術がこんなに幅広く応用されているのに驚きました」と書かれていました。

 そんな会社での私の仕事は「法務」という、中学生には具体的なイメージの湧きにくい分野なのですが、やや強引に、「会社は、〝法人〟といって、法律的には、ヒトと同じように扱われるのですよ」とか「会社は、社会の中で、顧客、消費者、地域の人々、株主、債権者など多くの人々と関わって存在しているのですよ」などと話しました。1年生の諸君には、正直、難しいかなと思ったのですが、「株主と債権者とは、何が違うのですか?」という質問を受けたのには驚きました。

 次いで、私の〝生き様〟を語ることになるのですが、ここでは、私のこれまでの経験の中から、(1)会社で起きた「個人情報の流出事件」と(2)大学2年のときの「大学紛争(スト)」の2つのエピソードを紹介し、そのとき私自身がどのように考え、「判断」したか、について語りました。

 (1)では、「会社は、社会に対して説明する責任を果たすべきである」との判断から、記者会見による速やかな公表に至った(私自身もマイクの前に立った)経過を話しました。

 (2)では、1970年前後に日本全国で起きていた大学紛争のことや当時の社会状況(東大安田講堂事件、よど号事件、浅間山荘事件など)を紹介し、慶應でも、72年12月〜73年6月までストにより日吉のキャンパスが封鎖されたこと、そんな中で、私は、スト派の学生の主張には反対し、無関心派の学生の態度には憤りを感じて、スト解除に向けた学生大会開催の署名活動をした経験を話しました。時代があまりにも違うので、この話題を採り上げることには若干躊躇したのですが、私の世代しかこのことを伝える人間がいないと考え、あえて採り上げた次第です。皆さん熱心に耳を傾けてくれて、「〝大学紛争〟というコトバを初めて知りました。」「慶應で過去にそんな事があったことを知って驚きました。」との感想が多く寄せられました。

 当日も述べましたが、私が皆さんに伝えたかったのは、「他人に判断をまかせるのではなく、自分で考え、自分で判断し、その自分の判断に責任をもつ人になって下さい。それが、福澤諭吉先生の〝独立自尊〟の精神です。」ということです。

 皆さんのこれからの成長を心から期待しています。

 

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