2024年度 目路はるか教室
1Cコース
ビジネスの心得、武士道にあり 〜相手を敬う気持ち〜
東部ケミカル株式会社 代表取締役社長/慶應義塾體育會弓術部 監督
島田 壮 氏 (シマダ ソウ)

私が弓術に出会ったのは普通部に入った4月、部活動の見学をしている時でした。様々な部活を見学し、最後に体育館の裏に入ったときに見つけたのが弓術部でした。先輩方が落ち着いた様子で練習している姿が凛として恰好良く、矢を放つ音もとても新鮮で、すぐに魅了されました。弓術をやれば、きっと落ち着いた人間になれるだろう。そんな理由で弓術部に入部し、結局、大学まで10年間弓術を続けました。
社会の荒波に揉まれる二十年余の時を経て、今は会社の経営をしながら大学の弓術部監督をしています。今回、目路はるか教室で講義をする機会をいただき、大学の弓術部員に教えている弓道の心得を演題として選びました。
スポーツでは勝者がいれば、必ず敗者がいます。勝者は喜んで当たり前ですが、敗者の気持ちも理解し、敗者の前でガッツポーズをするなど、喜びを表現するような驕った態度は決して取らないようにする。それが武士道としての弓道が大切にしている心得です。この心得は、仕事にも生かされています。勝者がいれば敗者がいる、というのはビジネスも同じ。だからこそ、何においても相手を敬う気持ちを忘れてはいけない、そう考えています。
講演当日は、武士道としての弓道の心得についてお話ししたあと、場所を日吉キャンパス内に ある志正弓道場に移し、普通部生に弓術の体験をしていただきました。さすが、普通部生。見事に的に矢を射抜いたにも関わらず、中らなかった同級生を気遣い、喜びを表現しないよう我慢していました。中には、矢が的に中ってガッツポースをしてしまう生徒もいました。しかし、その後はっと、自分の行動に気づき、礼をし直している姿は可愛らしく、大変微笑ましく思いました。
この度は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。ご準備をしてくださった先生方、熱心に受講してくださった普通部生に感謝申し上げます。
※ 慶應では弓道のことを弓術と言っています。