労作展

2023年度労作展 受賞作品

書道科

赤いペンマーク

3年K.K.君

  「三年連続で絶対賞をとるぞ。」 という強い思いで僕は練習を始めた。 僕は三年間、 書道科で労作展に取り組んできた。 そして、 二年連続で賞を取っているので、 三年連続で取ってやるぞと最初の時は思っていたが、 そう簡単にはいかなかった。 いろんなことがあって、 全然集中できなかった。 書いているうちに次第にそんなことも忘れていった。 「こんなので今年も賞を取れるのだろうか。」 と不安が常に頭を過り、 周りからも今年の僕はやる気がないのかとまで言われ続けた。
 僕は字が綺麗だ。 兄は字が汚いのに、 弟の僕が字が綺麗なことは我が家では兄弟それぞれの個性で、 僕には僕の強みがあることを実感させてくれた。 小学校の時から好きな事をより楽しくやるということを心がけてきた。 得意なことや好きなことは、 それをやっていて楽しいからやるので苦労とか努力などとは言わないような気がしていた。 だから普通部での労作展で、 何をやってもいいと言われたら自分の得意な書道を選ぶことは全然不思議ではない。 しかし労作展は自分では十分精いっぱい 「努力」 しているが、 それだけでは足りないことがわかった。 臨書は題材にした作品の字体・運筆・書風まで似せなければならなくて、 さらに僕が挑戦した隷書は、 僕の中で文字の基本であった 「右上がり」 という概念を懐すことから始めなければならなくて、 慣れるのに何回も何回も半紙での練習を積み重ねる必要があったことだ。 さらに練習できる時間は限られていて、 ラクロスや勉強との時間配分をどうするかが課題だった。 途中から、 賞が取れなかったら、 「努力」 には何の意味もないことになるのか、 と思うと心配でたまらなかった。
 これはもう書道だけではなくなった。 ここで折れたら僕の人生できっと後悔する、 と心に誓って一枚一枚集中して書き続け、 必死に頑張り続けた。 納得のいくレベルになって、 一段上に上ってはじめて見える景色があるのかもしれない、 そう信じて書き続けているうちに力が抜けて、 頭で注意する点を考えながら書くというよりは、 筆先の一点に集中し無意識に書いている感覚になるのが分かった。 そして最後のレッスンで、 僕の夏のすべてをかけた一枚を書き上げた。
 搬入当日、 僕は装飾係で自分の作品をみんなの前で披露した時、 「うまぁ~」、 「やるじゃん!すげぇ!」 と絶賛された。 その時の達成感は今でも身に染みて覚えている。 作品は入ってきた人の一番初めに目に留まる教室の奥に飾った。
 審査が終わり、 労作展一日目。 いよいよ運命の日だ。 僕は朝一番に三Dの教室に行き中に入ると、 そこには堂々と飾られている僕の作品には 「賞」 の文字が見えた。 その裏には少し地味だけど、 凛々しく輝いている 「赤いペンマーク」 があった。