労作展

2023年度労作展 受賞作品

書道科

三年間の集大成

3年I.T.君

 普通部入学前、 圧倒された労作展。 それぞれの作品に向き合い続けてきたこの二年半は本当に充実した時間だった。
 一年生の時は 「九成宮醴泉銘」。 楷書の極則とも言われ、 とても美しい作品で臨書を始める人は皆、 習うではないだろうか。 小学校の頃から書道を習っていたが、 その時の課題を仕上げて終わるというものだったので、 同じ感じでとにかくお手本に近づけるように練習をしていた。 ある日海外の友達に、 何で同じ文を何枚も書くのかと聞かれ、 すぐに答えが出なかった。 その後僕が出した答えは、 練習を重ねる事で筆の運びがスムーズになり、 自然と身につくということ。 次第に書く時に気を配る箇所は減り、 字間や墨の量、 全体のバランスにまで気が配れるようになった。
 二年生はほぼ正方形のマス目の中に、 角ついた字形、 剛健な運筆で、 一文字ごとに見事に構成されている 「始平公造像記」。 今までに経験の無い運筆、 書体だった。 一年の夏とは違って腕を骨折していない分、 体全体を使って取り組めた。 九月が近づくにつれてカスレのいい感じが表現できるようになり、 お手本とは少し違うけど自分らしさを表現した造像記となった。 表装もギリギリまで悩みこだわったので、 提出時は達成感があった。
 三年も迷わず書道科を選択した。 綺麗で力強い字を探し、 普段はあまり見かけない隷書体を学ぶ事にした。 その中でもはらい (八分隷) がとても気に入った事もあり、 「曹全碑」 に決めた。 所属している水泳部では、 この夏いくつかの試合にエントリーできそうで、 昨年より忙しくなるだろうと予想した。 限られた時間をうまく利用する事、 そして自分の体調を想定して計画をたてた。 早めに取り組み始めたが、 春はスローペース、 夏が近づくと次第にエンジンがかかってきた。 やるべき事はこれまでの二年間でわかっていたので、 心の迷いも無く一番効率が良かったと思う。 とはいえ、 歯の矯正の痛みや、 塾高野球部の甲子園応援で八月中旬から予定が狂い後半は焦ったのだった。 今年は制作日誌や曹全碑についてのまとめをパソコンで仕上げる事にも挑戦をした。 感想を書き上げ、 提出するものが揃った時は、 とにかくホッとしたのを覚えている。
 僕にとって労作展とは、 自分に足りないところを気づかせてくれる貴重な機会であった。 普通部入学時は、 色々な事を同時に処理する事、 粘り強く取り組む事が苦手で緊張しやすい性格だったが、 日々の生活と労作展、 同時に向き合い続けて心が成長できたし、 自分に自信がもてるようになった。 準備の大切さや、 自分のリズム、 自分の弱さも実感した。 三枚のメダルを見た時に、 頑張った事はもちろん、 周りには協力してくれる先生や家族、 友達がいたからこそ自分が成長できた事とこの先も忘れずにいたいと思う。