労作展

2021年度労作展 受賞作品

理科

都会のベランダで造るビオトープ

3年F.T君

 僕は小さい頃から植物が好きだった。 昔の写真を見ても片手に何かしらの草を持っている。 それは今も同じで、 鉄道趣味の合間に植物採取をしたりしている。
 そんな自分は図書館に行っても植物の本ばかり借りるのは当然の事であるが、 小学生の頃一冊の本と出会った。 今思えばこの本と出会わなければ労作展をするどころか普通部を受験することもなかっただろう。 その本の内容は 「学校ビオトープ」 だ。 この本を読んだおかげで僕はビオトープに魅せられ、 いつかやってみたいと思った。 そんな自分の願いを叶えるのにうってつけだったのが労作展だった。
 受験を乗り越え、 一年生の労作展のためにビオトープ本体を製作したが当時知識がまだ乏しかった僕は何度か苦心した。 在来種だと思って入れたのが外来種で繁殖しすぎてしまったり、 アオミドロが増えすぎたり、 水が干上がったりした。 また、 観察日記をよく理解できていなかったせいか、 出来上がった作品は決して満足のいくものではなかった。
 二年生の労作展は反省を生かし、 観察日記に注力した。 この年はコロナのため外出できなかったが臨時休校中、 労作展に集中することができた。 また、 ビオトープの知識を深め、 様々な植物の生育に挑戦した。 これが功を奏したのか、 この年は賞を頂いた。
 そして今回。 準備は前回の労作展が終わった直後から始めた。 といっても昨年と同じように写真をたくさん撮った。 秋になり出来た種子を採ったり、 草を抜いたり、 来年に向けての管理をする。 そうしているとだんだん水入れの頻度が減りあっという間に冬となった。 冬という季節はこの研究に於いてとてもつらい時期だ。 冬越しの観察以外日誌に書くことがほとんどないためだ。 半ばネタ切れ状態の冬が過ぎると春がやってくる。 ビオトープの春は四月上旬からと、 陸上の植物より少し遅めだ。 この時期になると植物のあるありがたみを感じる。 また、 レポートともいよいよ書き始めなくてはならず少しづつビオトープが忙しくなってくる。
 ようやく三年目の夏がやってきた。 「夏」 という時期はビオトープで一番大事だと言っても過言ではない。 入れてもすぐに蒸発してしまう水、 伸び放題になる草、 写真の撮影と課題が山積する。 特に今年は虫に悩まされた。 ビオトープはベランダにあり勿論虫も家の目の前まで来るため、 小さいものは家の中に入ってきてしまう。 極度の虫嫌いにはビオトープはおすすめできない。 色々なトラブルもあったがなんとか最後の夏を無事終えることができた。 夏の終わりは毎年寂しいが、 今年はいつもとは違う寂しさがあった。
 ついに9月に入り、 労作展も近づきはじめた。 提出数週間前、 僕の苦手なカメムシがビオトープで産卵をしてくれ、 良くも悪くも 「良い観察」 となった。 その後学校が始まり、 作品の提出日となった。 三年間の成果は審査されることとなりもう自分のできることはポスターを上手く作ることだけとなった。 そのポスターも数日後提出し、 いよいよ労作展本番を残すのみとなった。
 そして迎えた当日。 僕は部会の係もあるため登校し、 ついでに自分の作品を見に行った。 すると、 作品に 「賞」 と書かれた札がはってあった。 その瞬間、 うれしさがあふれ出した。 そして驚くことに札の裏には特別展示のマークがあったのだ。 「僕の作品は労作展の手本となる価値がある」 と認められた気分になり感無量だった。 それとともに三年続いた労作展がこれで終わりとなることに悲しさや寂しさを感じた。
  「労作展」 という行事を通じて、 観察の大切さや様々な動植物の存在などたくさんの事を知り、 学ぶことができた。 労作展に取り組んだこの三年間は決して忘れることは無い。 労作展に参加でき、 自分の納得できる形で研究を終えられたという誇りを胸に、 これからも精進していきたい。