労作展

2021年度 受賞作品

社会科

鳥獣戯画甲巻の魅力とは〜現存甲巻の謎に迫る〜

3年T.K君

 僕は日本史が好きだ。 僕らの祖先の姿は見えなくても、 日本中に彼らの足跡を見ることができる。 旅先で史跡を訪ねると、 数百年前にタイムスリップしたような気分になる。
 一年生の労作展で思いついた企画は、 国宝五城の比較を三年間かけて研究すること。 一年生では彦根城と犬山城を 「観光」 の視点から比較した。 しかし二年に進級する春休みにコロナ禍となり、 旅行が出来ない状況になって企画を断念。 二年生では英語小説の翻訳に転換した。 そして今年も変わらずコロナ禍での最後の労作展。 僕はどうしても日本史をテーマにしたかった。
 城以外に心惹かれるものが浮かばなかった春、 国立東京博物館で 「国宝鳥獣戯画のすべて」 が開催された。 鳥獣戯画は、 擬人化された兎や蛙がコミカルな動きで相撲や弓矢などを楽しんでいる絵巻で 「漫画の祖」 とも言われるとても有名な日本画だ。 僕は城を諦め、 この 「鳥獣戯画」 をテーマにしようと展覧会に足を運んだ。
 現存する鳥獣戯画は全四巻、 全長四十四メートルもある。 これは平安時代後期から鎌倉時代初期にかけて段階的に描かれたとされ 「いつ」 「どこで」 「だれが」 「何のために」 描いたのかほとんどが謎だ。 展覧会で初めて本物を見た時、 動物たちが今にも飛び出してきそうな躍動感、 シニカルな世相風刺、 次から次へと誘う絵巻の仕掛けに、 僕は瞬きをするのが勿体ないと思うほど魅了された。 最後の労作展では、 この謎に包まれた絵巻の魅力を解き明かしたいと思った。
 展示会は多くの謎を解き明かすカギ、 時代背景、 所蔵されている 「高山寺」 と明恵上人まで、 広範囲に及ぶ展示だった。 その後、 七冊の関連書籍を読んだ。 そして僕は混乱した。 あまりにも広範囲に及ぶ絵巻の謎。 諸説あるこの絵巻のどこをどう論じればよいのか。
 思い返すと一年生の時、 城の比較も同じだった。 時代も違えばその時々で城主も変わる、 役割も違う。 それをどう比較するのか。 ゴールデンウィークに取材旅行をしたもののテーマを絞り切れず、 夏休みの最後に 「観光」 という視点で比較することに決め、 九月初旬に再度取材旅行を敢行した。 ギリギリの再スタートだった。
 僕はあの二の舞を踏むまいとテーマを絞った。 そして最初に描かれた 「現存甲巻」 に的を絞り、 テーマを 「鳥獣戯画甲巻の魅力とは~現存甲巻の謎に迫る~」 とした。 僕が最初に感じたインスピレーションを頼りに 「いつ」 「誰が」 「何のために」 描いたのか、 オリジナルの仮設を立て検証したうえで 「鳥獣戯画の魅力」 を考察した。 そして僕は鳥獣戯画の魅力を 「オタク感」 だと結論づけた。
 そもそも労作展とは 「普通部オタク展覧会」 といってもいい。 様々なテーマで深堀した研究論文や、 高い完成度の作品が並ぶ。 そういった意味でも僕の最後の労作展は、 歴史オタクによるオタク絵巻の深堀り研究ということで、 自分なりに悔いのない作品になったと思っている。