労作展

2018年度 受賞作品

国語科

小説と共に

3年H.O.君

 三つのメダルがそろったケースを見て僕はふぅ~と息をついた。その三つのメダルが、僕の三年間の努力を物語っている。その中でも三つ目のメダルとなったカメレオンのメダルはより一層輝いていた。

 思えば、今年の労作展は去年の労作展二日目から始まった。二年生の時お世話になったK先生から小説のコメントをいただいていた時だった。

 「僕、来年も小説でがんばります。」

 その時から僕の三年目の小説制作が始まったのだ。一年生の時は自らの体験を元に、カイロ日本人学校を舞台とした『ピラミッドの見える教室で』、二年目は自分の趣味を物語に取り入れた『天守閣を仰ぎ見て』。二年目まで小説を選択した僕にとって三年目の労作展、何を選択するか。それは考えるまでもなく小説だった。今年も新しい小説に挑戦しよう。そのやる気で満ちあふれていた。ただ、いくら小説を書こうと決めたからってすぐに書けるわけではない。どんなことをテーマにしようか。どのような技法を取り入れようか。そのヒントを僕は多くの小説から学ぼうとした。

 村上春樹作の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』。この小説の構造を見て、僕は目の色を変えた。環境や世界、時代などまるで全てが正反対な二つの舞台でそれぞれ物語が進んでいく。そしてその二つの線がやがて一つの太い綱になる。こんな作品を書いてみたい。真似してみたい。こうして構造の骨組はしっかりと固まった。しかし、決まらないのはテーマである。

 一、二年目共に物語を書き始める手前で、テーマをしっかりと設定し、そこから構造を決める。それがいわゆる僕の手法だった。しかし、今回はそのテーマを決めるのが一苦労だった。『国際交流』についてと『スマホ、ゲーム依存症』について。この二つが僕の選考に残った。去年、フィンランドとの国際交流に参加した僕にとって留学やホームステイにはスポットを当てやすいがそれで具体的に何を伝えていくのか。そして、理想とする構造に当てはまるのか。『スマホ、ゲーム依存症』については僕が興味をもっている分野でもあり、テーマ性もしっかりしている。ただし、実際書くにあたり、書きやすいだろうか。さんざん考えたすえ、僕はあえて書きにくい『スマホ、ゲーム依存症』をテーマとして選んだ。果たしてこれが正しい判断だったのか。

 試し書きを始めた四月。僕は筆が全く進まなかった。書きやすい作文などとは正反対。いくら部屋にこもっても。いくら作文用紙とにらめっこをしていても。一ミリも筆が進まなかった。やっと二、三ページを書き終えて、それでも翌日、原稿用紙にバツをつけたこともあった。第一章を書き終えても一からもう一回構想し直したり。もう一回基本情報を整理したり。なかなか二章に進めない自分を見て、あせりと不安がふつふつと出てきた。あの時、小説を選択しなければ。そう思ったのも一度や二度ではない。小説を書く身として筆が進まないのは致命的である。僕は思い切って一から書き直した。人物の設定も大人から学生へ。その二人の関係も親子へ。書き直す時の悔しさは言葉に言い表せない。こみあげてくる熱く、苦い思いも我慢して僕は再度、ペンを持ち始めた。夏休み、部活の有無も関係なく、僕は必死に原稿用紙に向った。そしてようやく第一稿を完成させた。

 ここで終われば苦なんてないような物だ。次に出てきた問題はボリュームである。スマホがある世界、ない世界を交互に書くのだが、どうしてもスマホなき世界の描写にとまどってしまう。ストーリー展開が早いと、読者は物語にのめりこめない。父からアドバイスをもらった僕は、序盤の説明ゾーンとエピソードや伏線を取り入れるよう工夫した。ファクトチェックも大変だった。事実関係と対照させるために新聞で調べながら製作していった。こうした苦労がつまった小説。それはまさに僕の努力の結晶となった。三年間の小説製作は一つの作品を製作する過程の大切さを教えてくれた。

 お疲れ様。三つのメダル、いや、三つの小説が僕にそう語っていた。