労作展

保健体育科

僕が好きな事、苦手な事

3年R.M.君

 僕は、コツコツと努力をする事が苦手だ。

 僕は、フェンシングで「勝つ」事が好きだ。

 この2つを両立するのは、わがままかもしれない。僕は、フェンシングをやっている。そして、全国にいるライバル達は毎日練習し、試験期間中でも遠征に行っている。僕には、そんな生活はできない。

 しかし、フェンシングの力は練習量のみで決まるものでは無いと思う。いかに効率的な練習をして、いかに的確な戦い方をするかが一番重要だ。「フェンシングはスポーツのチェス」と言われるほど頭を使った駆け引きが多いスポーツだ。

 昨年の労作展「負けないフェンシング」では自分のフェンシングが過去一年でどのように成長したかを分析した。基本練習をコツコツと続けた結果フェンシングの一番基本的で、一番有効な攻撃である「アタック」の力が向上したことが判明した。

 その結果、昨年フェンシングのフルーレ種目で中学生日本代表になった。その後、2回の海外遠征や国中の色々な大会に参加して経験を積んだ。そして今年は全国中学生大会で3位入賞し、激戦だったフルーレ種目で二年連続日本代表になれた。

 しかし、様々な相手と対戦することで、逆に自分の実力がまだまだということを体感した。

 そんな時、海外のクラブの練習に参加したところ、「防御が上手い」とそれまであまり言われたことが無かった評価を受けた。そして、より客観的、定量的に自分の攻撃を分析することにより、自分では気付いていない攻撃の特徴があるのかもしれないと思った。その答えを見つける為に、攻撃の定量的分析をすることにした。それが今年の労作展「勝つフェンシング」の研究テーマだ。

 僕が、フェンシングの試合で攻撃を仕掛ける時には、二つのパターンがある。相手と力の差があり、戦いに余裕がある場合は自分が望む攻撃の形で攻撃を仕掛ける。しかし、力量差が少ない場合や、相手選手の方が格上の場合、相手の状況をみながら直感的・反射的に攻撃の形を考えて、攻撃する。その直感的な判断が正しいかどうかは試合の結果で判断してしまうことが多い。しかし、勝った試合でも適切でない攻撃を仕掛けている場合はあるし、負けた試合でも絶妙なアタックが決まっている場合もある。効果的な攻撃方法を分析する為には、試合の勝ち負けではなく、一つ一つの攻撃を分析する必要がある。

 より効果的な攻撃方法を研究することにより、限られた練習時間でも試合に勝つことができる。そして効果的な攻撃方法を知る為には、自分が出した攻撃の一本一本を分析する必要がある。

 このように考えて今年は「勝つフェンシング」という題目で試合中に出した五百七十本の攻撃を種目毎に分析した。その結果、成功率の高い攻撃方法、成功率が低い攻撃方法がはっきりと数字に表れた。それは、自分がイメージしていたものとは異なる内容だった。更に過去一年で攻撃の成功率自体が大幅に向上していることも分かった。

 フェンシングの歴史は古いが、日本のフェンシングのレベルはまだ低いと思う。練習方法にも、気合と根性で沢山練習すれば強くなるという考え方もあるし、それも正しいと思う。しかし、効率的に練習し、客観的に効果的な攻撃をするということの重要性を気づかされたのが今年の労作展だった。

 ぼくは、コツコツと練習することが苦手で、気合と根性で沢山練習する自信はない。けれど、効率的な練習と効果的な攻撃方法を研究し、最少の努力で勝てればと思っている。