労作展

2020年度労作展 受賞作品

書道科

自分を見つめ直す鏡

3年Y.Y.君

 今回二年連続で賞を取れたことはとても嬉しいと同時に書道と離れてしまうことを悲しくも思う。
 僕が書道と出会ったのは、 小学校一年生の時だった。 小学校に入る前までの僕の字はもはや字と呼べるものではなかった。 その惨状を見た母が、 近くの書道教室に通わせてくれた。 最初は硬筆を習っていた。 毎週通うごとに字が上手に綺麗になっていくのがとても楽しかった。 硬筆を一年程練習した後に次のレベルの毛筆に進むことが出来た。 初めてもらった筆をお湯に入れてのりをとかした時の喜びは今でも覚えている。 すずりに墨を注ぎ、 筆を墨につける動作は七年以上たった今でも楽しい。 筆に墨をなじませ余分な墨を取り、 紙と筆をつける時の緊張感は今でも変わらない。 毛筆を始めたての頃は横線や縦線、 払いや止めなどの基本的な事しか練習しなかったが、 とても充実していた。 そんな日々もあっという間に過ぎ、 ひらがな、 カタカナ、 漢字などのステップを経て普通部に入学した。
 入学をして二ヶ月を過ぎた頃労作展についての説明があった。 まずは何科にするか。 僕の答えは決まっていた。 「書道」 だ。 僕は迷わず書道科を選びすぐに取り組み始めた。 題材は、 すぐに決まった。 「九成宮醴泉銘」 だ。 小学校六年間を通して練習した楷書を極めようと思ったからだ。 「九成宮醴泉銘」 は、 楷書のお手本と呼ばれる古典で僕の目的にぴったりだった。 いざ練習を始めてみると今まで学んできた楷書と形が違っていたためとても苦労した。 筆の運び方や間隔の空け方などとても意識する事があった。 大きな苦難を乗り越えて作った初めての労作展。 僕はそこそこの自信があった。 しかし、 結果は賞に至らなかった。
 初めての労作展が終わり努力が足りなかったと感じた僕は、 十一月から二年の労作展に取り組み始めた。 一つ一つの字を丁寧に読み解き、 字の感覚をつかむために千文字近くある全文を筆ペンで写した。 万全の準備で挑んだ労作展。 念願の賞を取る事が出来た。 また、 特別展示にも選ばれた。 とても嬉しかった。
 二年の時と同様に十一月から始めた。 始めの二枚半切を書くことにしたので前回よりも効率的にやらなければいけなかった。 半切二枚となると覚える事が倍に増え、 一文字の完成に長くかかってしまった。 特に一番苦しかったのは、 字と字の間隔をそろえる事だった。 一回一回字の大きさが変わってしまうためとても苦しかった。 一・二年以上に苦しんだ労作展は、 賞を取れた。 嬉しいというより安心した気持ちの方が強かった。
 労作展で学んだ事は自分と向き合う事の大切さだと感じた。 書道は、 心がブレていたら作品にもブレが生じる。 集中力を欠けばたるんだ作品になってしまう。 書という鏡を通して自分を見つめ直し欠点を見つけ直していく。 自分を見つめ直すことが将来自分をもっと良くすると感じた。