労作展

2020年度 受賞作品

社会科

素晴らしい体験

3年O.S.君

 十月某日、 水泳部の活動中扇風機を壊してしまった僕は  (その日は陸上トレーニングだった)、 泣く泣く教員室に入っていった。 篠原先生が出てきて下さり、 指示されたように教員室前のテーブルで反省文を書いていると…
「大沼君、 不名誉な作文と、 もう一つ名誉な作文の依頼を持ってきたヨ」
ふと顔を上げると、 篠原先生がニコニコしながら作文用紙を数枚持ってきた。 そう、 今まさに書いているこの作文である。 やっと自分にもこれを書く日が…ちょっぴり感動。 せっかく任された訳だし、 僕の三年間の労作展について綴ろう。
  「普通部に入ったら、 法律系のことをやりたい! 三年連続で賞を取りたい!」
 普通部という存在に目を輝かせ、 理想を抱いていたあの頃。 この時からそんな偉そうなことを考えていたのか。 ムズムズした気分になるが、 理想を抱くのは悪いことではない。 普通部の受験に受かった後の二・三月の頃。 入学してからしばらくもその理想は健在だった。 その熱意で完成させたのが、   「裁判官になってみたら〜名誉毀損〜」 という作品。 東京地方裁判所へ夏休み中通い、 テーマになりそうな裁判を選び、 それを掘り下げていくという内容だった。 三年間やった今から見てみると、 クオリティが高い作品とは言えないが、 一年生なりの努力が認められたのだろう。 賞を頂いた。 なにせ、 裁判所? 入っていいの!? みたいなレベルだったのだ。 ただ、 最近の一年生の作品を見てみると、 そのレベルの高さに驚かされる。
 それに比べて、 僕の二年生時の作品は、 今見ても我ながら感心する。 「俺すげええ」 と。 一年生時の作品の完全な上位互換だった。 特に、 担当して下さった山先生には 「裁判を傍聴するためにではなく、 裁判記録を写すために裁判所に通うという新たなプロセス」 と評価してもらえた。 この時は受賞のみならず、 特別展示までもらえた訳だが、 この作品に対する心残りは、 「結局の所、 結論に奇抜性がなかったこと」。 山先生には評価して頂いたが、 それはあくまでプロセスであった。
 今年の労作展では、 テーマ決めに難航した。 正直なところ、 もう裁判はうんざりだったのだ。 インパクトが欲しかった。 斬新性を求めていた。 社会科でも美術科の超大作並の質感を出したい。 悩みに悩み、 行きついた先が、 「株」。 ただし、 株を売り買いするようなありきたりなものではない。 株の本を読み漁り、 粉飾決済というテーマを見つけた。 作品名は  「粉飾決済に物申してみた!」。 少しふざけたし、 案の定講評でも 「もう少しちゃんとした題名にした方がいいのでは?」 みたいなことを書かれた。 別に、 「株式市場における粉飾決済防止の提言」 みたいに堅苦しくすることだって出来た。 しかしそれはあまりに滑稽であり、 慣習的だ。 労作展社会科の堅苦しいイメージを少し破りたかった。 今回の作品について、 心残りはない。 勿論、 不完全ではあると思う。 しかし、 やれるだけのことはやったと自負できる。 受賞・特別展示だった。
 最後に、 僕が労作展という行事に対する三年間通しての感想を述べたい。
 非常にめんどくさい。 終わりが見えない。 どんなに頑張っても、 待っているのは貰えるかも分からない賞状とメダルだけ。 なのに、 頑張る人間がいる。 何故? 普通部は 「好きなことに打ちこめるから」 の様なことを言う。 そういう人もいるのだろうが、 少なくとも僕は株が大好きだった訳ではない。 明確な答えはないが、 思ったことがある。 労作展という機会がなければ、 絶対に出会えなかったものに出会える。
 僕達普通部生は、 他の人にはできない、 素晴らしい経験をしている。