労作展

2020年度 受賞作品

理科

三年間の労作展を終えて

3年K.A.君

  「四〇〇〇㎞」
 これは、 僕が三年間の労作展で取り上げたさまざまな地震調査のため、 現地に行った移動距離の合計である。
 一年生のときには、 伊豆半島 (二五〇㎞) をはじめとして、 阪神淡路 (一二〇〇㎞)、 岐阜根尾谷 (九〇〇㎞)、 三浦半島 (一五〇㎞) に調査に行った。 二年生では、 房総半島 (三〇㎞) に行き、 三年生の今年は三月から新型コロナによる県外に移動制限が出され現地調査は無理かとあきらめかけていたが、 ようやく六月に解除されたため、 和歌山県の南紀ジオパーク (一二〇〇㎞) まで足を運んで、 過去の地震と津波によって発生した地層や被害の様子を実際に観察してきた。 三年間を振り返ってみると、 日本は本当に地震の多い国で、 様々な地域で多くの地震が過去に発生していることに気づかされる。
 もともと、 労作展のテーマを地震の調査にしようと考えたのは、 小学校四年生の時に行ったサッカー合宿の思い出の場所 (熊本阿蘇) が、 その八か月後に震度七という大きな地震に襲われ、 熊本市内やその周辺で非常に大きな被害が出たというニュースを見たことがきっかけである。 そのときは地震の恐ろしさをすごく身近に感じたし、 なぜ地震が起きるのか、 次はいつ・どこで発生するのかが分かったらにいな、 とも思ったので、 普通部に入学したらそれを労作展のテーマにしようと考えていた。 一年生のときには、 まず地震の種類には何があるのかから調べ始め、 活断層型と海溝型の二つがあることが分かったが、 取り組み期間も短かったことから、 活断層地震だけを調べ、 二年生では海溝型地震のなかでも首都圏で起きる可能性の高い 「相模トラフ」 を調べた。 ただ昨年も調査する時間が足りずに、 津波についての予測を断念していたのだった。
 そして、 最終学年の今年は、 三年間の集大成であることから労作展に向けた意気込みとしても特別気合が入っていた。 一、 二年生のときからの継続で地震予測をテーマとし、 最も近い将来に起きるといわれている 「南海トラフ」 を取り上げ、 昨年のリベンジで津波の予測までしっかり時間をかけて調査することにした。 また新型コロナの影響もあり、 新たな専門家の話を直接聞きに行くというやり方も難しいと考え、 津波に関する調査と予測は、 独学でやり切ろうと決めていた。
 とはいうものの、 いざ始めてみると何度も悩んでしまった。 特に悩んだのは、 今回やろうとしている津波の高さと陸地に到達するまでの時間を予測するために、 どの数式を組み合わせればよいのかということだ。 全て自力で算出しようとすると、 当然求めなければいけない数値も増えていき計算も増える。 また様々な文献から、 いくつかの計算方法を探し出し、 その中から最もよい方法を使うので、 ボツになってしまった計算結果もいくつもあった。 もう三つ目のメダルは無理かとあきらめかけたが、 目の前のことに取り組み続けるしかないと考え、 ひたすら計算を繰り返した。
 今、 僕の前には、 地震に関する地味な三冊のレポートファイルと三つのメダルがある。
 労作展ではプロ顔負けの技術や美術作品などに注目が集まりがちだが、 僕も三年間継続して地震をテーマに取り上げ、 調査や分析、 論文作成に時間をかけて取り組んできた。 この地味なレポートファイルを見るたびに、 今回の苦労を懐かしく思い出すだろう。