労作展

2020年度 受賞作品

音楽科

最高の選択

3年N.K.君

 労作展。 普通部の特色が最も現れている行事かもしれない。 自分の本当にやりたいことに打ち込んで成果を発表出来る。 小学六年生の時初めて労作展を見て、 やってみたい! と思ったことを覚えている。
 最初の労作展は、 どの教科に出品するかを決める所から始まった。 当時の僕は美術科と音楽科の二択で迷っていた。 クラシック音楽にはまり始めた頃で、 習っているピアノも少しずつ本格的な曲に取り組みはじめていたことから、 音楽にすることに決めた。 三年間同じ教科に出そう、 と決めていたのでその後三年間に渡る僕と音楽科の付き合いが始まる。 後から考えると最高の選択だった。 なぜなら、 クラシックが好きな僕にとって音楽科の研究は喜びであり幸せなことだったからだ。 思い返しても三年間、 労作展に費やした時間の中で 「大変」 なことはあっても 「嫌」 なことは決してなかった。
 このように一年生は教科選びから始まった。 研究題材を決めた後も今度は 「何をやれば良いか。」 が分からず、 手あたり次第研究題材に関わる本を読んだり、 ピアノの練習をしたりで形になるまでの段階で時間がどんどん過ぎていった。 特に音楽科の難関であるアナリーゼは強敵であった。 楽典を本格的に学んでいない自分には 「調進行」 や 「和声進行」 等さっぱりで、 参考文献を読むのだがどこから切り口を見つけ出せば良いかさえ分からなかった。 録音も初めてで非常に難儀した。
 二年生になり、 労作展では一年生で経験していた分、 基本的なことでは悩まずに済んだ。 題材は一年生で研究したブラームスに影響を与えた大作曲家のベートーヴェンを扱った。 これ程の人物になると資料の数が膨大で、 結果的に論文類は一年次の二倍程になった。 しかし問題があった。 難易度が高いうえに三楽章形式だった彼のソナタは一楽章ごとの演奏の精度を高めることが難しかった。 「論文」 と 「演奏」 はどちらも重要なキーであり論文が満足出来ただけに課題を感じた。
 三年生になり、 最後の労作展にあたってはどの楽曲を扱うかで一ヶ月ほど悩んだ。 最後なので自分が大好きな曲にしようと決めて、 最終的にブラームスの 「六つの小品」 にした。 一年次にもブラームスを扱ったため、 論文類が二番煎じにならないように気を付けた。 アナリーゼも六曲行う必要があり至極苦労した。 何より昨年の課題である 「演奏」 も、 今回は六曲になったので精度を高める負荷が実に増した。 大変な曲を選んでしまったと悩んだ。 しかし論文執筆が進むにつれ三年間で非常に多くの知識が自分の中に蓄積されていることを知り、 成長したな、 と感じた。 「演奏」 も譜読みのスピードやテクニックが向上し非常に満足出来る演奏が出来た。
 労作展には 「賞」 というものがある。 僕はこのシステムは素晴らしいと思う。 努力が必ず報われるからだ。 僕は小学生の時に見た労作展で、 数あるハイレベルな作品の中でひときわ輝いていた賞を目の当たりにし、 当然憧れを持ち続けていた。 入学当初の労作展の説明会で賞とは 「労作」 に与えられるもの、 と知った。 つまり見栄えに関わらず、 「労作」 であることが評価される。 自分は光栄にも三年間賞を頂くことが出来た。 最終学年になった今、 一年生の頃の自分の作品を見ると、 量も少ないし非常に稚拙に見える。 見栄えも我ながらパッとしない。 しかし、 当時の僕にとっては絶対に労作だった。 だから賞を頂けたのだろう。 三年間の普通部生活を振り返り、 自分は労作展にかなりの時間を費やしてきたな、 と感じる。 それぞれの時のメダルを見るとその年の思い出が蘇る。
 最後の労作展が終わり友達と下校する時、 達成感と、 何とも言えない寂しい気持ちがした。