労作展

2020年度 受賞作品

技術家庭科

趣味

2年T.Y.君

 僕には趣味がない。 趣味というと、 スポーツや読書、 音楽などたくさん種類はあるが、 毎日ゴロゴロしている僕はあまり興味がない。 また、 僕はスポーツや楽器などの才能が一切ない。 こんなこともあり、 僕は趣味がなかった。
 労作展は趣味が直結している場合が多いと思う。 「電車の模型」 や 「好きな本の翻訳」、 「音楽の演奏」。 普通部生それぞれが好きなことを一生懸命取り組んでいく、 そして誰もが魅了されるようなすごい作品を展示する。 そのような自分の趣味で人を魅了出来る普通部生達は本当にかっこいいと思う。 しかし僕の場合は正反対である。
 一年生の時、 趣味もない僕は母の提案でクロスステッチをした。 初めて作った割には上手に出来た気がした。 ありがたいことに賞をいただいた。
 今年も特に題材はなかったので同じクロスステッチをしようと思った。 テーマは昨年と同じ慶應関係にしようと考え、 「福澤諭吉先生と北里柴三郎先生」 に早々に決めた。 パソコンのソフトで図案を作成してプリントアウトし、 必要そうな色の糸と布を買った。 ここまではすぐに出来たが、 問題はここからだ。 始めは基準となるものが何もないため、 どこから縫えば良いか分からなくなる。 何度もマスがずれて間違えた。 また、 昨年は 「福澤諭吉先生」 だけだったので、 今年は二人分縫わなければならない。 数えてはいないが、 一万マスは優に超えている気がした。
  「なんだ縫っているだけか」 と思う人もいると思う。 実際僕も初めて作るときはそう思った。 しかし、 一度やれば分かるが、 とても難しい。 僕の場合、 元の画像が白黒のため、 図案も白黒になり、 図案通りに進めるといとも簡単に怪物が誕生する。 なので、 一から色を決めて縫うことにしていた。
 ところで、 三次元のこの世界では色の濃淡が普通に存在する。 人は色の濃淡によってものを認識する。 濃淡はだれも意識しないが、 重要なことである。 しかし、 クロスステッチをしていると、 色の濃淡は凶器に変わり、 三次元で意識していなかったことを認識させる。 非常に難しい。 同じ色でずっと縫っていくと、 立体感がなくなり、 ドット絵化する。 これもまた怪物にしか見えない。 何度も遠くから見て色がおかしくないかチェックするが、 実際終わってからでないと分からない。 頑張って縫い終わらせた所にリッパーを入れてほどいていくのは何ともむなしかった。 この現象は服や髪の毛の部分によく起こった。 これには大変苦労した。
 そうこうしていくうちに九月になり、 残り少し。 あと十マスの時はカウントダウンしているかのようにドキドキ・ウキウキした。 完成。 沢山の思い出がよみがえった。 前に買っておいた額に入れ、 学校に持って行った。
 受賞。 思えば良くやったな。 良く出来たなとうれしくなった。 やりきった。
 労作展が終わり、 ふと思った。
「僕には趣味が一つあります。」
今なら胸を張って言える気がした。