労作展

2020年度 受賞作品

英語科

最後の労作展を終えて

3年K.T.君

 今年の労作展のテーマも英語にすることは早くから決めていた。 一昨年は英文小説の翻訳、 昨年はCNN10などの英語放送のディクテーションと翻訳を行ったが、 どれも英文の和訳にチャレンジしてみようと考えた。
 英訳のテーマは迷ったが、 NHKで放送されるニュース番組の中から、 興味を惹かれるトピックを選び、 その内容を訳すことにした。 NHKニュースを選んだのは、 国際問題から国内の話題まで幅広くカバーしていること、 公共放送として放送内容に偏りがないだろうと思ったことなどが理由だ。
 当初は日本国内のローカルな話題を多く選んで、 外国人に日本の意外な一面を知ってもらえるような内容にしようかとも思ったが、 作業期間中に新型コロナウイルス、 アメリカ大統領選挙、 香港国家安全維持法の問題、 そして安倍政権の終了と、 大きな出来事が立て続けに起きたため、 翻訳対象も自然にこうしたニュースが多くなった。 ただ出来上がりとしては、 バラエティのある話題選びができたと思う。
 実際の翻訳ではまず原文となる和文を、 英訳しやすく、 かつ僕の乏しい単語力を超えるような難しい単語を使わない和文に組み替える 「和文和訳」 を行った。 この作業には高い日本語の国語力が求められるので難しく、 特に主語や目的語が平気で省略される会話やインタビューは非常に苦労した。
 こうして作った和文を英訳する際は、 最初は短い文の連続にして、 それを that 節や関係詞で繋げていったが、 長くなりすぎず、 構文も破綻しないようにするのにとても気を使った。 加えて同じ単語や慣用句の繰り返しを避けることや、 日本語では同じ 「思う」 でも原文のニュアンスをくみ取って最適な単語 (think, believe, suppose, suspect, doubt, beafraid などなど) を選ぶことに力を注いだのだが、 これが本当に大変だった。 ただ、 構文を保つことや類義語の選び方などは、 一昨年、 昨年の労作展の作業が役に立っていると感じることもあり、 やったことが無駄になっていないと実感した。
 今はAI翻訳が実用化され始めていて、 数年もすれば非常に滑らかな翻訳ができると言われている。 それを見越して、 外国語を学ぶ必要はもはやないと言う人もいる。 しかし僕はそうは思わない。 川端康成はノーベル文学賞を受賞した際、 賞の半分は米国人翻訳者のサイデンステッカー教授のものだと言って、 賞金を半分渡したそうだ。 川端康成にここまで言わせるということは、 教授は日本の歴史や文化への深い理解と、 文学者としての感性の両方を駆使して、 考えに考え抜いた翻訳をしたのだと思う。
 僕はAI翻訳を否定はしないし、 例えば法律文書の翻訳や誤字脱字の校正などはAIのほうが向いているかもしれない。 しかし、 サイデンステッカー教授の翻訳の 「味わい」 までをAIが超えられるとは思えないし、 だからこそ人間が外国語を学ぶ意味もなくならないはずだと思う。 僕自身も、 そのような人間にしかできない表現ができるぐらいの高みを目指しつつ、 ひとまずは言いたいことが誤解なく伝わるぐらいの発信力を身に着けられるよう、 英語の学習を続けていきたいと思う。