労作展

数学科

労作展を「楽しむ」

3年T.K.君

 最後の労作展でえらんだテーマは・・完全数。

 完全数、それはその数自身を除く約数の和が、その数自身になるような数。例えば六。約数は一、二、三で、これらを足すと六になる。約二千年前に初めて考えられたにも関わらず、未解決問題の多い分野だ。例えば、奇数の完全数が存在するか、という問題がある。昨年の労作展ではこの問題に取り組み、解決した・・と思った。が、勝手な思い込みによって成り立つと思った仮定が原因となり、その証明は完全なものではなくなっていたのだ。

 今年の労作展でも、完全数を研究することにしたが、今度は少し視点を変えることにした。二千年もの間多くの数学者が挑んできた、奇数の完全数の問題に真っ正面から挑むのは無謀だと悟ったのだ。六月、何か新しい道がないかと考えていたとき、突然、ある考えがひらめいた。ある数の全ての約数を加えるのではなく、一部の約数に絞って考えたらどうなるであろう? 例えば十二の約数の一、二、三、四、六を全て足すと十六となってしまうが、二の倍数のうち偶数のものだけ足すと、二と四と六であるから十二である。他にもこのような数は存在するだろうか? 二の倍数でなく、三や四の倍数についても拡張できるだろうか? 一瞬にしてたくさんの問題が姿を現した。その後もこのような数はどんどん見つかっていく。例えば、二の倍数の約数だけを足すと自分自身になるような数は、十二、五十六、九百九十二、・・。約一週間の間、この探索作業に没頭したが、何か規則性をみつけなければならない。だがこれがまた、全くのランダムにしか見えない。と困っていると、再び、ひらめきに助けられた。

 完全数のリスト、六、二十八、四百九十六、・・と、先程の数列をよく見比べると、ちょうど二倍になっているではないか! もしかしたら二以外の数でも同様にできるかもしれない、と思って実際に計算していくと・・全てがぴったり合う!まさにパズルの様だった。最初はどこにピースを置けばいいかよくわからないが、あるところからはおもしろい程きれいに模様が形作られていく。だが、数学はそこでおしまいではない。なぜパズルのピースがそこにあてはまるのか、その規則を厳密に示さなければならない。そう、証明である。

 まだまだ時間はあるものの、証明が完成しなければ意味がない。本当に文字通り一日中考えたが、全くわからない。その後の一週間もほとんど何もわからず経過。かなり苦しい時期であった。それでも、研究しているときはいつも楽しかったから、なんとか続けることができた。そしてついに、努力が報われ、証明が完成。十分に満足のいく証明だったので、数学者の飯高茂先生へと手紙を書くことにした。数日後、数冊の本と共に返事の手紙が送られてきた。僕の成果は認められたのである。

 九月一日、僕の作品は完成した。コピーした論文を一枚、一枚、ファイルへと入れていくときは、とてもうれしかった。ついに満足のいく作品ができた。これならもう、賞を取れなくても十分満足だ、という気持ちであった。

 とは言っても、さすがに賞かどうかは気になる。日曜日の朝一番、自分で教室の鍵を開け、明かりをつける。

「あっ賞だ」

しかも特別展示。もう何というか、言葉にならないほどうれしかった。そうか、特別展示か、と何度も心の中でつぶやいた。

 今年の労作展、昨年以上に大変で、諦めそうになったが、最後まで続けられたのは、研究を楽しめたからだ。そして、楽しんで追究することができたからこそ、本当に満足のいく作品が作れたのである。何よりも、楽しむこと、それが最も大事だと知ることができた。