労作展

数学科

3年最後の労作展

3年S.I.君

 普通部生活最後の労作展。僕が昨年に引き続き、「魔方陣」について扱う事を決めたのが五月頃。それから六月、七月と日付は進んでいき、気付けば八月に入っていた。その頃になってやっと作業を始めたものの、その内容は昨年の研究成果を完成させるというだけのもので単純作業でもあったため、作業は遅々として進まなかった。おまけにこの先の予定などは全く立てておらず、研究の終着点が見えないということも僕の作業のペースを遅くさせた。

 八月も終盤にさしかかったころ、やっと僕は単純作業から脱し、新しい作業に入ることができた。今までは四×四の魔方陣について扱っていたが、五×五の魔方陣について扱うことに決め、僕が研究を進める上での教科書となった「魔方陣の世界」(大森清美著)の該当箇所を読み進めていった。だが、四から五に一マス増えただけなのに新しい性質が次々に現れて、理解するのに思ったより時間がかかってしまった。また読み進める内に五×五の魔方陣は二億五七三〇万五二二四個という莫大な数だけ存在すると知り、この全数を書き上げるのは諦め(計算してみたところコピー用紙一枚に三十の魔方陣を印刷しても八五七万六八四〇枚必要だと分かった)五次完全魔方陣というテーマに絞って研究を進めることに決めた。この完全魔方陣というものは通常の魔方陣の性質に加えてまた違う特殊な性質を持つもので、最終的に今年の僕の労作展のテーマとなった。

 けれど作業を進める内にどうしても分からないことができてしまった。こんな時、昨年ならば本の著者である大森清美先生に手紙で質問をさせていただきその疑問を解消していたのだが、夏休みが始まってすぐの頃に「今年もよろしくお願いします」と手紙で伝えたところ今年は色々な活動をしているため時間が足りないと返信があり、今年は手紙での質問はできないと考えていたところだった。その後しばらく考えたがどうしても分からなかったので、やはり手紙を出すことにした。その時は「返信が来なければテーマを変えよう」とさえ考えていた。

 しかし、その考えが実行されることは無かった。数日後には先生からの返信があったのだ。この返信を機に僕はやっとやる気を出した。下書きからパソコンで資料を作り、論文を書き始めた。また約一ヶ月分書いていなかった製作日誌も実際の日付まで書き進めた。なぜ僕がここまでやる気を出したかと聞かれれば、答えはひとつだ。忙しい中、僕のために手紙を書いてくださった大森先生の期待に応えたかったから。ただそのひとつに尽きた。

 夏休みも、もう終わりという九月七日、論文類提出の二日前。僕はやっと作品を完成させた。そして九月二十四日、労作展二日目、僕は自分の目で受賞を確認することができた。昨年に引き続き受賞することができたのも、もちろん嬉しかったが、僕がそれ以上に嬉しかったのは労作展一日目に大森先生が普通部を訪れ、置き手紙を残していってくれたことだった。昨年のように会ってお話することはできなかったが僕はとても嬉しかった。

 僕が二年連続で賞を取ることができたのは、本当に大森先生のおかげだと思っている。最後になってしまったが、大森清美先生に感謝の意を示したい。本当にありがとうございました。