労作展

2018年度労作展 受賞作品

理科

ナメクジを三年間研究した男

3年I.O.君

 皆の中には、労作展が目的で普通部に入学してきた人がいると思う。その人たちに質問したい。実際やってみてどうだったか。僕が一年生の時、何をやるのかについてとても悩んだことを覚えている。技術家庭と美術の作品が多めなイメージを持っていた僕は、当初美術は無理ということは分かっていたので、技術をやろうと思っていた。しかし、いざ具体的に何をするのか考えてみたら、これだというものが全く出てこなかった。時間だけが刻々と進んでいくだけで、内容は決められないままでいた。僕は、この時点ですでに嫌々やらされている気になっていた。そのような状況の中で、母から鶴の一声と言ってもいいような発言が出た。

「ナメクジやってみたら?」

僕はなるほどなぁと思った。これならあまり皆がやらないことだと思うし、時期も雨が多い時期だったので採集もしやすいと思った。これ以上考えても意味がないと思った僕は、ナメクジを研究してみることにした。とりあえずやることが決まったときは安心した。

 しかし、タイトルは決まったものの、具体的に何をやるのか全く決まっていない状態だった。正直、楽しそうとは思っていなかったので、なかなかやりたいことが思い浮かばなかった。またつまづくのかと、労作展がどんどん嫌になってきてしまっているような気がした。

 結局、ひたすら色々な実験をすることにした。

 夏休みも終盤になってレポートまで書き終えた時、賞が取れるクオリティではないと僕は思った。本当にたくさんの実験をして、少し考察をしただけだからだ。

 初めて普通部生として、そして開催する側として労作展を迎えた。皆がどのようなことをしてきたのを楽しみに教室へ入っていった。すると、教室に入った時に友達から、

「お前賞取ってるぞ」

と言われた。絶対に賞はないと思っていた僕は、もちろんにわかには信じられなかった。けれども本当に賞を取っていた。労作展後の講評では、たくさんの実験を行ったことが評価されたと言われた。しかし、このままでは二年生でナメクジを研究しても賞は取れないとも言われた。

 僕は二年生の労作展では違うことをやりたかった。苦手なレポートをやりたくなかったからだ。しかし、また去年みたいにやることを決めるだけで何時間も使いたくなかったので、ナメクジの研究を続けることにした。具体的なことも何となくは決めていた。産卵に挑戦してみようと考えていた。

 実際飼育容器を作って育ててみた。しかし、全くうまくいきそうになかった。このままだと一年生のときよりもクオリティが低くなってしまうと思った。しかし、いい案が思い浮かばないまま二年生の労作展が終わってしまった。当然賞はとれなかった。

 一、二年生でナメクジの研究をしたので、三年生でもやることは自動的に決まったようなものだった。二年生のリベンジもしたいと思った。

 二年生の労作展が終わってからすぐに飼育容器を新しくして観察を始めた。一週間に一度観察をしていた。すると、産卵しているのを発見し、成長するところまで見ることができた。嬉しかった。

 満足する結果が出た僕は、もう賞はいいやと思っていた。

 そして、普通部最後の労作展。教室に入ると、教室当番の人から、

「賞だよ」

と言われた。一年生の時と同じだった。こうなると、二年生の労作展、先生にたくさんアドバイスをもらって頑張ればよかった。もったいないことをしたと思った。

 一年生のときにはあんな嫌がっていた労作展。実際終わって見たら、労作展がなかったらナメクジを飼うことはなかった。とても貴重な機会だと分かった。そして二個のメダルを取らせてくれたナメクジと色々手伝ってくれた母親に感謝したい。