2021年度 目路はるか教室

1Gコース

『洞察力、観察力を養うポイントを学ぶ』

1992(平成4)年卒業大正製薬株式会社 代表取締役社長

上原 茂 氏(うえはら しげる)

 私の在学中には「目路はるか教室」はありませんでしたので、このお話を頂いた時に、どうしようかと悩みましたが、私自身の「学生の時に、もう少しこんな事に気をつけて生活をしていれば、もっと違った時間の使い方があったのではないか」という思いから、テーマは『洞察力、観察力を養うポイントを学ぶ』とさせて頂きました。

 今は情報を自分からとりに行かなくても、自然と入ってくる時代です。しかし、昔は人に会う、話す、聞く、見るといった方法を用いて情報を集めて、それを整理していました。この一番古典的な方法である「聞く」「聴く」ということ、そして情報を「採る」ということを、普通部生の皆さんに体験してもらいたいと思い準備をしました。

 授業では異なった仕事をしている社員10名を集め、それぞれの社員に質問し、社員の仕事内容を当てるというグループワークに取り組んでもらいました。限られた情報・知識の中で、どのように相手から話を「聴き」、自分たちが必要とする情報を「採る」のかを、ゲーム感覚で競ってもらいました。情報を「採る」ために効果的な質問をし、得た情報をみんなで持ち寄って整理をし、一つの解を導き出すという、非常に高度なワークを経験してもらえたと思います。

 このようなスタイルで実施しようと思ったもう一つの理由は、海外留学経験によるものです。私はアメリカの学校に通いましたが、そこではこのような授業が頻繁に行われていました。日本の学校の授業は座学が多く、こうしたスタイルの授業は少ないので、今回は普段の授業とは少し違った経験をしてもらいたいと思いました。

 今回のワークで必要とされる能力は、これからの生活の中でも重要なことだと思います。普通部生の皆さんは、クラスメートや仲の良い友達と過ごす時間が多いと思いますが、これから大人になると、そうはいかなくなります。初めて会う人や、年に1、2回しか会わない人と関わる機会が増えてくるでしょう。そんな相手と話をした時に、瞬間的にその人が発しているシグナルを感じ取り、そしてそのシグナルから自分に必要な情報をくみ取ることが重要です。また、同じ話を聞く場にいても、そこから何かを得ようと目的意識を持って聴くこと、何か情報を採ろうと思って聴くこと、これができるか否かで自分に価値のある時間を過ごせるかどうかが決まります。

 コロナ禍で生活やコミュニケーションのスタイルが変わり、情報のとり方も大きく変化していきます。しかし、私はこれからも自分の耳で「聴き」にいくこと、「採り」にいくことが大事だと思います。そのために人に会うことを大切にしています。特にこの慶應義塾で育まれた人脈をとても大切にしています。人と人とのつながりという面でも慶應義塾は、非常に恵まれている学校だと感じています。皆さんもそのような恵まれた環境にいるということを、大人になるにつれて感じるのではないでしょうか。大人になった今でも、何でも話せるのが学生の時の友達です。皆さんも友達が周りにいることは、とても幸せな事だと思って、是非良い関係をたくさん作ってください。

 最後に、今回のプログラムに参加し、一生懸命に取り組んでくれた普通部生の皆さんに心より感謝します。また「目路はるか教室」の講師という大変貴重な機会を頂きました先生方、世話人の皆様に重ねて感謝申し上げます。

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