2025年度 目路はるか教室
2025年度3Gコース
決断力を養おうー裁判官の仕事を通じて考えていることー
東京地裁判事
長谷川 秀治 氏 (ハセガワ シュウジ)

このたびは,目路はるか教室で講義をする機会をいただきありがとうございました。
この講義を選んでくれた生徒のみなさんの中には,既に弁護士などの法律関係の仕事に関心を抱いている人もいましたが,裁判を傍聴したり,裁判官と触れ合ったりする機会は中々なかったと思います。講義では,法律関係の仕事に関心を抱いている生徒のみなさんの参考になるように,私の学生時代の体験談を交えながら,司法試験に合格するまでの経緯を具体的にお話ししました。また,実際の裁判官の仕事がどのようなものかということについて、私が裁判官になってから経験したそれぞれの任地での担当事件や苦労した出来事をお話ししました。
「決断力を養おう」という演題を設定したところ,生徒のみなさんからは事前に「優柔不断で困っています」,「早く決断できるようになりたい」などのご意見をいただきましたが,裁判官は,ただ即断すればよいというものではなく,多くの人が納得するような判断を求められています。そのためには,予断を抱くことなく,徹底的に調査をした上で,結論を分けるポイントがどこにあるのかを正確に把握し,様々な角度から検証をすることが必要であること,そして,自分なりにベストを尽くした上で最終的には覚悟をもって決断をすることが大事です。裁判官は厳格で堅物というイメージを抱かれがちですが,人間同士の様々な紛争を解決するためには,思いやりや大らかさといった要素が大切であり,実際の裁判官は人情味に溢れる方も多くいます。裁判傍聴では,20代の被告人がコカインを使用した容疑をかけられている刑事裁判を傍聴しました。実際の法廷の緊張感はきっと普通部生のみなさんの印象に残ったことと思います。そうした中で,検察官や裁判官が,ただ被告人を責めるのではなく,立ち直りに向けて親身になって語りかけている姿を見ていただけたのではないでしょうか。実際傍聴していただいた事件を題材とした模擬評議では,活発な議論が交わされました。議論することで違った考えもあることを知ることができたと思います。正しい決断をすることに近道はありませんが,自分の意思一つで決められることはたくさんあります。頑張るか頑張らないか,好きか嫌いか,関心を抱くかどうかといったことも,自分の意思で決めることができます。悩んだらポジティブで寛容な決断を心がけて学生生活を謳歌していただけたらと思います。