2025年度 目路はるか教室
2025年度3Aコース
博士号をとって、好きな研究して暮らしてみた
東京科学大学 情報理工学院 教授・リーダーシップ教育院長
秋山 泰 氏 (アキヤマ ユタカ)

国立大学で研究や教育をしてきた私が、普通部生のこれからの人生の選択に役に立つ話ができるのか?と緊張もしましたが、分野や職業を決めた際に考えたことや、普通部の強みに関する私見をざっくばらんにお話しさせていただきました。
講義は、第一部(人生の選択の話)と第二部(私の研究分野の紹介)の構成で準備していましたが、生徒の質問も多く100分間の8割は第一部で費やされ、それで良かったと感じました。私がコンピュータの研究者になれたのは、普通部3年の数学で担当の吉村啓先生が当時は画期的なプログラミング実習を実施され、全生徒がぞろぞろと大学の計算機センターを訪ねて大型計算機の利用体験をしたことに始まります。私は補佐役に志願し、労作展の作品(「コンピュータとの出会い FORTRAN実習」)を吉村先生に褒めていただけた事が私の人生を変えました。実家から作品と賞状や吉村先生の自筆の講評を発見したので講義でも紹介しました。未来はコンピュータ産業の時代だと考え、高3で医学部進学から工学部に切り替えて両親と揉めた話などは若干”非教育的”だったかもしれませんが、普通部の強みは好きなことに没頭できる環境です。当時は趣味やスポーツに没頭していた悪友らが今の日本の中枢を教授や社長や国会議員として支えている事実を(友人らの威光を借りて)訴えました。私も研究者という地味な職業ながら、4度の転職と分野拡大(スパコン・AI・創薬)を経て、2社の起業もしたことをお話ししました。
大岡山キャンパスの見学では、学生が使える工作機械が並ぶ「ものつくりセンター」、鳥人間コンテストに参加するサークル「Meister」の工房、学生が集う「Taki Plaza」を訪ねました。帰り際に「話はわかりましたけど、研究者って儲かりそうもないすよね」と言ってくれた熱心な生徒がいて、そのストレートなコミュニケーションこそ普通部の強みだぜ、と頼もしく感じました。研究者が輝けるビジネスを起業して大儲けしたり、代議士や官僚となり日本の研究・教育を守って頂きたいと思います。普通部で授かった教育がいかに自分を創ってきたかを振り返る好機ともなりました。