2025年度 目路はるか教室

2025年度2Gコース

脳とAIをつなぐ?! テレパシーやサイボーグの先にある未来

慶應義塾大学理工学部 教授
研究成果活用企業(株)LIFESCAPES・代表取締役

牛場 潤一 氏 (ウシバ ジュンイチ)

 僕は、普通部からみると駅の反対側に位置している矢上キャンパスで、脳科学とAIに関する教育と研究をしています。医学部のある信濃町キャンパスへも電車で通いながら、脳神経系の機能回復のための医療機器開発もおこなっています。7年前には大学発スタートアップを起業して代表取締役になり、大学の研究成果を製品として日本全国や世界に販売する活動を始めました。
 30年以上前は、僕もみんなと同じ学生服を着て普通部に通っていたから、今回の目路はるか教室で出会った皆が、当時の自分や、自分の友だちのように見えました。そんな皆に、今回の授業を通じて僕が伝えたかったことは、「ワクワクに満ちた学びを大切に」ということです。僕がこれまで取り組んできた「脳とAIをつなぐ研究」は、漫画や小説に出てくるサイボーグやテレパシーを実現していくような技術でもあり、それはそれでとってもロマンがあるのだけど、でもそうしたSFをさらに超えたワクワクを、学問は創っていける− そんな”無限大の可能性”が、この先の大学での生活に溢れていることを感じてもらえたら嬉しいです。
 脳とAIをつなぐ研究はいま、脳卒中、脊髄損傷、頭部外傷、ジストニアといった、さまざまな脳神経系のトラブルで生じてしまった脳内状態を”見える化”し、適切な脳シグナルが発生したときだけロボットを駆動させて麻痺手の運動をサポートするような、最先端の医療技術へと進化し、脳のなかにある神経回路を組み替えることに役立てられています。最終的にはこういった装置を外した生身の状態で、もう一度自分の力で手を動かすことができるようになる――つまり、今までの医療では治すことが難しかった様々な運動障害を、いまは僕たちが創り出したテクノロジーの力で治せるようになったのです。
 AIの本質は、数学であり物理です。脳の仕組みは、化学や生物学の言葉で理解することができます。そして、どんなテクノロジーが私たちの暮らしを彩ってくれるだろうかと想像する力は、国語や社会、芸術によって育まれます。普通部、そしてその先の高校や大学に進むたびに、「学ぶことは、希望である」ということを思い出して、学生生活を楽しんで欲しいと思います。