数学科
労作展≠成功
3年T.S.君
労作展会場をまわると、華やかで迫力ある絵や技術作品が迎えてくれる。これらの作品は、観客の目を一瞬で奪ってしまう。それに比べて、数学科の作品は、部屋の隅でひっそりとたたずんでいる。
一年生の労作展の科目決めの時、僕には数学科しか見えていなかった。テーマであるプログラミングが数学科に属していたというのもあったが、僕は「賞」にも惹かれていた。約七百ある労作展の作品の内、たったの十四作品しかない数学科は、最も賞を取りやすいと考えたのだ。僕は、二足歩行ロボットとプログラミングを三年間で完成させるべく発進した。
いかに労作展を楽しむかは、いくつかのポイントにかかっている。
まず、一番大事なテーマだ。自分がやりたいことにしなければ絶対に頑張り続けることはできないと思う。僕は二足歩行ロボットをプログラミングして動かすことをテーマとしたが、これは僕のやりたいことを詰め込んだものだ。
次に、制作日誌だ。作品提出日ぎりぎりにまとめて書く人もいるが、それでは日誌は苦になってしまう。特に論文が必須の数学科では、制作日誌は足跡となり、論文の万能なメモ帳となる。僕は、制作日誌から作業内容を起こして論文を書いていた。制作日誌を書き続ける方法は、三年目になってやっと習得した。それは日記のように毎日コツコツ書き記すことだ。
僕が一番苦労したのは論文だった。書き始めるのが遅くなり、九月初めのコンピュータ部の合宿では、毎年、論文に追われていた。制作日誌のようにはいかなかった。
最後に、諦めないことだ。僕はプログラミングの過程で、成功した覚えがほとんどない。毎日失敗し、原因究明に時間を費やし、結局直らないことが日常茶飯事だった。でもその失敗も決して無駄ではなく、僕の足跡になるから続けられた。
集大成として形を残そうとした三年目も納得のいく形にはならなかった。でも僕は、成功だけがすべてではないと知った。たとえ、成功しなくても、それまでの失敗の考察など、すべての過程を認めて下さる数学科の先生方がいるのだ。結果だけ見るのではなくそこまでの努力も見てもらえることが、僕にとっての労作展だった。