2022年度 目路はるか教室

2Eコース

知ってみたい 〜産婦人科医のお仕事とは?

杏林大学医学部 産科婦人科学教室 准教授

森定 徹 氏 (モリサダ トオル)

 今回この目路はるか教室の講師のお話をいただいた時、とても光栄だったのと同時に「さて普通部生に何を話せばいいのだろう?」と戸惑いがあったのが正直なところでした。大学病院に勤務しているため病院訪問や手術室見学などが定番かと思いましたが現時点のコロナ感染状況では不可能であり、かといって産婦人科学の座学の講義は退屈だろうし、どうしようか悩みました。
 幸い昨年の目路はるか教室を同じ職場の谷垣伸治先生が担当しておられ、超音波検査の体験実習が有意義だったとお聞きし、頼れる谷垣先輩の助言と超音波検査機器の企業の方の全面的なご協力を頂いて、胎児超音波検査の体験と予防医療としてのがん検診の話、そして医師の実際の生活の紹介の3本立てにすることにしました。
 当日は開始前に超音波検査機器3台を教室の後方に搬入し、機器のセットアップを行いました。まず講義として産婦人科の概要紹介、産科の超音波検査(特に胎児推定体重の測定の仕方)について説明しました。その後普通部生を3つの班に分け、胎児超音波検査を実際に体験してもらいました。学生1名5〜6分の持ち時間で胎児の観察、推定体重の測定、4Dモードで胎児顔面の描出を試みてもらいました。後半は婦人科学の話題として、検診やワクチンで予防できるがんとして子宮頸がんについての講義を行い、最後に医師の仕事の実際を知ってもらうために、産婦人科医師の日々の仕事/生活のスケジュールの1例を示しました。
 おそらく今回初めて見た胎児の超音波画像に、好奇心に満ちたキラキラした瞳で真剣に見入っている普通部生に接して、医療が日常になってしまっている私は心が洗われる思いでした。知的で快活かつ素朴な学風が変わっていないことが感じられて懐かしく嬉しかったです。
 医師の仕事は確かに楽ではないかもしれません。信頼される医師になるためには自分自身のつらさは脇において、事態を俯瞰して持てる知識と技術で最善の策を冷静に考察し、それを病気や怪我でピンチにある患者さんに穏やかに伝える対応力が必要になります。難しいことですがやり遂げられた時はとても充足した気持ちになります。産婦人科医師の仕事の魅力が普通部生に少しでも伝わっていたら嬉しいです。
 当日は、藤田先生にも超音波検査を体験していただき、普通部生も大いに盛り上がり楽しく実習することができました。お礼申し上げます。また、ご協力をいただい超音波検査機器の企業の皆様にお礼申し上げます。今回は杏林大学医学部の医学生3名にもお手伝いをしていただきました。帰路で医学生として中学生の教育に参画できた充実感を話していました。彼らにも深謝いたします。
 帰りの普通部通りを歩きながら、本校の卒業生であることをあらためて誇りに感じた1日でした。ありがとうございました。

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