2022年度 目路はるか教室

1Jコース

若き後輩へ

弁護士(日本、NY州)

小川 周哉 氏 (オガワ シュウヤ)

 講師のお話を頂戴したときに、さて、何のお話をしようかと考えた。学生の時間は有限だから、無駄に遣ってほしくない。職業柄、人前でお話をさせていただく機会は比較的多い方だと思うが、今回の対象は一年生。つい先日まで小学生だった聴講者に対して話をする機会は、これまでなかった。
 学生時代の話をしようか、仕事の内容を話そうか。とはいえ私は職業人としてまだまだ端くれ。我が国の将来を担う若者に、弁護士を語るには早い。そこで、弁護士としては少し変わった経歴であるシリコンバレーで学んだことを中心に話をして、あとは、普通部生に色々と考えて貰い、今の勉強が、福澤先生が大切にされた実学に結びつくイメージを持って貰えるようにしよう、と決めた。
 米国トップ層の大学生は、社会に出るにあたり合理的で安定した選択肢として、起業やスタートアップ経営参画を意識している。それは、20代のうちに大企業で学ぶことができることと、起業等を通じて得られることを比較したときに、後者の方が企業経営という観点から有意な機会が多く、その経歴は、その後に大企業のトップを志す者にとって良いストーリーになる、という米国社会のものの見方を背景にしている。自我作古の精神をもった塾の人として、普通部生には、自らが価値を生み出し、塾に、社会に、そして世界に貢献できる人に成長していって欲しい、またそういった挑戦を讃える勇気ある社会を創っていって欲しいと願って、そのようなメッセージを送ることとした。
 少し難しいかな、と心配しながら、身の回りの「こうなればいいのに」というテーマからビジネスを作るとしたら、と検討と発表をしてもらったところ、正に杞憂。普通部生の考えること、そのロジック、競争戦略のストーリーは、いずれも膝を打つ素晴らしいものだった。さすがは普通部生、おみそれ致しました。
 開講後いただいた心温まる御礼の文章に、担当させていただけて良かったと感激した。私が一番伝えたかった、塾は挑戦者の気概ある学校である、できあがったブランドだと思うな、自分がその価値を創っていく責任のある人なのだ、ということが、明日を担う若き塾生の中にしっかりと根付いてくれることを願う。貴重な機会に、こちらこそ、学ぶところが多かった。本当にありがとうございました。

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