数学科
カードゲームと過ごした夏
1年K.S.君
普通部に入学する前から、「労作展」というものの存在を知ってはいた。けれども、小学校六年生の時に初めて労作展に行った際もやりたいものは思いつかなかったし、正直あまり楽しみにしていなかった。
入学してしばらくしたら労作展の計画表を提出することになった。最初の美術の計画は親に止められ、テーマがない状態で時間のみ過ぎていった。気が付いたら提出期限の直前になっていて、かなり焦りながらも必死に色々と考えていたところに、あるカードゲームの存在を思い出した。それが、今回のテーマとなったSpot it! である。こうして、僕の最初の労作展は始まった。もしあの時テーマを変えていなかったら、僕は今頃この作文を書いていないのかもしれない。
さて、ここで今回の研究について簡単に説明する。テーマとなったSpot it!はフランス発のカードゲームで、日本やフランス等ではDobbleとして親しまれている。五十五枚のカードにそれぞれ八個ずつマークが描かれているのだが、適当に二枚のカードを取ると、必ず一つだけ共通するマークがあるのだ。今回はこの仕組みを解明し、枚数等を変えたオリジナル版を作成することを目的として研究した。
こんな感じで計画表を無事書き終えて提出し、数学科説明会等を受けた後、夏休み前から少しずつ始めることにした。
スタートダッシュは非常に順調であった。なぜなら、最初の作業は各カードに描かれているマークをエクセルで表に整理する、というとても簡単な作業であったからだ。この基本の表(後に間違いが発覚する)を作成した後、仕組みを解明するためこれをいじり、数学の先生にこの過程を説明したところで夏休みに入った。この時はすぐに終わると思っていた。
夏休みに入り、部会や予定等で忙しい中、自分なりに色々試していた。けれども仕組みがどうしても分からない。この時点で調べ作業を始めていれば良かったのに、自力で法則を探ることにこだわって、今思えばそこで大幅に時間をロスしていた。
とうとう降参して調べ作業に入ったのだが、ここでもまた問題が発生した。Spot it! には「有限射影平面」というものが活用されていることが分かったのだが、これが大学数学であるらしく、とても理解するのが難しかったのだ。この時は色々なサイトを見て、時間をかけて分かるところは理解してまとめることにした。また、オリジナル版を作成する上で、表を作成する必要があった。この表の作り方が分からず、試行錯誤の末やっと自分なりの方法を導き出すことができた(これも後に間違いが発覚)。これらのことが分かったところで、やっと論文の執筆をスタートした。
論文が一段落したところで、オリジナル版の作成にも取り掛かった。カードもマークも三十一ずつにする、と決めて使うマークをデザインするところから始めた。そして、それらをマーカーで描き、パワーポイントにまとめて印刷・切り抜きをした。先ほどの表の間違いのせいで失敗もしたし、印刷と切り抜きはとても面倒だったのだが、何とか完成した。
ここまで終わったのが八月の後半。そこから、論文の推敲・印刷・ファイリング、そしてポスターの作成をし、九月の最初の方にはほぼ全ての作業が完成した。色々大変だったので大きな達成感を感じた。
その後の作品の搬入等も無事に済ませ、とうとう労作展当日がやってきた。結果は賞、しかも特別展示であった。今回の研究では色々と苦労をしたので、とても嬉しかった。
今回の労作展で特別展示になったのには、失敗をしても諦めずに努力し続けたことが大きかったと思う。また、表を作ったり論文を書いたりする時には家族にたくさん助けられたので、非常にありがたかった。分からないことや、やり残したこと、反省点等も少しあるが、とりあえず一通り終えることができたので良かった。
今回の夏休みはかなり過酷であった。だが、その分やりがいを感じることができたし、将来につながるような経験もできた。労作展は、思っていたよりも楽しいのかもしれない。