理科
未知なる疑問への挑戦
1年T.T.君
初めての労作展である今夏、僕は「雑草オオバコのストレス耐性と種子散布方法の研究」を行った。そして夏休み終盤、僕は頭を抱えていた。僕の研究は、想定外の出来事や結果の連続でまさかの袋小路に陥っていた。オオバコは雑草であるため、種からの栽培方法や生育環境、生育期間が不明確で、まず実験対象のオオバコの発芽や成長が、想定より大幅に遅かった。そして実験・観察中の葉が、昆虫に食べられた。さらに一番解明したかったオオバコの成長の謎だが、今回の実験で成長を明確に確認する事が出来なかったのだ。生物や植物など「生き物」を相手にする研究は、環境や個体差などの影響も受けるので、大変であろうとある程度覚悟をしていたつもりだったが想像以上だった。
小学六年生の時、普通部の労作展へ足を運び、興味を存分に掘り下げ探究した錚々たる作品を目にし、僕は驚嘆した。そして自分でテーマを選定し、じっくり取り組めるならば、僕自身一番興味があり知りたい事を研究し、有意義で実り多い時間となるように努めようと心に決めていた。僕は幼少期より宇宙が好きであり、その流れから生物の特徴を模倣し人間の生活に役立てるバイオミメティクスに興味を持っていた。そして労作展でもバイオミメティクスに繋がる研究をしたいと考えた。研究対象として、身近で疑問に思っていることの中から、「自宅で自分の力で継続して実験出来るもの」であり、「季節を問わず研究出来るもの」として、雑草であるオオバコを選定した。雑草オオバコの特徴としては、踏まれても成長するという事が一般的に知られている。近所の公園でも踏まれてなお絶滅することなく繁殖を続けているオオバコの様子は、一学期に理科のフィールドノートで観察し大変興味を持っていた。そこで僕は、このオオバコの成長と繁殖の謎を解明し、バイオミメティクスへの応用を検討したいと考えた。
実験は大きく分けて三つ行い、継続的に観察を行った。しかしいずれも仮説を裏付けるような結果は出ず、僕自身大変戸惑った。夏休みの終盤まで粘り、追加で実験観察を行ったが、結果は変わらなかった。壁にぶつかり、そもそも実験の設定を間違えたのかと、問題点や改善点をあれこれ検討し、懸命に向き合ったが答えは出なかった。しかし今回の研究を行うにあたり読んだ「研究倫理」の書籍を改めて読み直し「研究とは未知を探究する場。予想は常に裏切られる。正解とは思えない結果が新たな発見に繋がる事もある。間違うことを恐れていては、本当に重要な発見を見逃してしまう。」という本文の言葉に、自分の行ってきた事、そして現状の結果も間違いではないと気づけた。そこで新たにデータを見直し、それぞれの実験結果から自分なりに考察を導き出し、今回の実験結果を踏まえ、今後の実験の改善点や方向性をまとめ労作展の論文とした。
今回の研究では、一番解明したかったオオバコの「ストレス耐性」と「種子拡散方法」の謎は明確には出来ず、この先も追加で実験が必要だ。そしてバイオミメティクスへの応用などはまだまだ遠い先の話だ。しかしこの実験結果があるからこそ、次の実験へ繋がっていく。労作展で自分のテーマと向き合い、「研究する」という事の真の意味、そして研究に向き合う姿勢を学ぶ事が出来た。自分で見つけた未知の疑問に、試行錯誤しながら取り組んでみることこそ意味があり胸が躍る。研究テーマは自分の興味のある事に取り組んだが、答えのない問題に取り組むことは、本当に苦労も多かった。でも自分なりの考察が導けた時、心からの達成感があった。これからも労作展を通し、答えなき未知の疑問に、臆する事なく果敢に取り組んでいきたい。