労作展

2024年度労作展 受賞作品

技術家庭科

限界を越えろ!

2年T.M.君

 僕は編み物を幼稚園の頃からはじめた。幼稚園はスペイン系のモンテソーリー教育に基づいた教育の一環で手先を器用にする為に編み物を教えてくれた。初めての編み物は小さなバッグ作りだった。今でも大事に持っていて、編み物を始めるきっかけにもなった。自分の作品は時間をかけて作成するせいか思い入れがありとても大事にしている。編み物を始めた当時は難しくて祖母に手伝ってもらいながら作った。今は、自分で考えた作品のデザインや着想を考えることができるようになった。編み物の歴史や世界に存在する多様な編み方のリサーチをしたことで賞を取ることができたと思う。
 話しは変わるが、慶應義塾幼稚舎で作品展という労作展と同じような作品展がある。普通部生になる前から、慶應生である故に毎年何かの作品を作成している。だから、毎年自分の作品の限界を越えていく経験や自信はある。しかし、普通部で僕は去年賞がとれなかった。幼稚舎の仲の良い同級生達は一年生のときも素晴らしい作品を作り、皆賞をとっていた。
 僕は慶應義塾幼稚舎生であるプライドもあり、去年とれなかった悔しさをばねにさらなる限界に挑戦した。僕が編み物を始めた当時は、祖母の手伝いが必要だったが、中学一年生の労作展からほぼ一人で編み物でラーメンやお寿司やケーキやハンバーガーを編んだ。前回は、あまり書くことがなかったレポートに苦戦しあまり上手に書けなかった。さらに家庭科の作品は、実用性がなくてはいけないと先生に指摘されたので今年は身につけられるものにした。その着想は、夏休みに得た。
 夏休みに大好きな映画ハリーポッターのスタジオツアーに行った。ハリーポッターとは千九百年代のイギリスを舞台にした、魔法使いの少年ハリーの物語である。ハリーが通うホグワーツ魔術学校には、四つの寮がありその映画のセットを見て回りながら、今回の労作展の作品のアイデアが浮かんだ。また、四つの寮のグッズが売店で売っていたので欲しくなり、ならば自分で作ってみようと思ったのもきっかけだった。寮のシンボルカラーで、四つの作品、マフラー、帽子、ハンドミットとショルダーバッグを作成することにした。これで、去年できなかった実用性がある作品が作れると確信した。そして、自分の作品を身につけるのも楽しみになった。
 さて、編み物の歴史は、約千七百年前に遡る。当時は、ヨーロッパでは着るだけではなく、生計をたてるために編み物をしながら日常生活を送っていたと考えられていた。僕も編み物しながら、三作品ものアニメシリーズを全て見終わってしまった。もし日本で、アニメを見ながら編み物をする大会を開催したら優勝できるかなと思うくらいだ。これも、編み物が上達してきた証拠にちがいない。
 バスケットボール部に所属する運動系の僕は、編み物をしているときはなぜかとても気分が落ち着く。僕にとって大切なかけがえのない時間になりつつある。単純な作業からくる静かで平穏な時間は、忙しい現代人に必要なのかもしれない。また、編み物の歴史や模様を調べていくうちに、もっと難易度の高い編み込みや模様に来年は挑戦したくなった。美術科のアート作品として編み物を出品してみるのも悪くない。編み物でつくる作品の限界に挑戦してみたくなったのだ。
 最後に、編み物は単純作業で思うほど難しくないのでぜひ皆さんにもお薦めしたい。温暖化は続くが、自分で作った手作りの作品を着て大切に長く使えるものができれば、長期的なエコに繋がるとも思う。手作りの素晴らしさを、編み物を通して再確認することができた。手芸屋まで送迎してくれた祖父やレポートの印刷を手伝ってくれた母や小さな頃から編み物のやり方を教えてくれた祖母。手伝ってくれた人たちがいたからこそ、今回の作品はできた。この感謝を忘れないように来年も頑張ろうと思う。