労作展

2023年度労作展 受賞作品

英語科

すごいこと

3年Y.H.君

 僕は、 一、 二年生のころ、 労作展では何かとても 「すごいこと」 をしなければならないと思っていた。 二年とも大好きな数学を題材に論文を書いたが、 「すごいこと」 として挑戦することにしたテーマが難しすぎて空回りしてしまい、 自分でも納得のいくような作品を作れずに終わってしまった。 最終年となる三年生は、 これまでのリベンジで頑張りたいと思い、 何か面白いテーマはないかと早い段階から頭を悩ませていた。 昨年までやっていた数学にはこだわらずに探そうと、 数学のほかにも、 物理、 地震と、 図書館に行っては、 気になった分野の資料を広く読んでいた。 国際言語学オリンピックの代表に選ばれたのはそんな時だった。 年明けより言語学オリンピックの勉強を本格的に始め、 その面白さや奥深さに気付き、 のめり込み始めていた頃だったので、 迷うことなく、 今年のテーマを言語学にすることにした。
 言語学は今までテーマにしていた数学よりは研究しやすいものだったので、 始めた頃は、 言語研究ができるのではないかと思い、 壮大な計画を作っていた。 しかし、 実際は、 国際言語学オリンピックに向けた勉強に多くの時間が取られ、 労作展にまでは手が回らず、 予定していた言語研究は進まないままに時間だけが過ぎていった。 七月下旬にブルガリアへ向かう頃までに終わっていたのは、 言語学オリンピック紹介の一部として論文に取り込もうと思っていた日本言語学オリンピックの解説部分だけだった。 そこで、 国際言語学オリンピックが終わったところで、 再度、 論文構成について考え直すことにした。 帰国後すぐに労作展に着手したが、 もう八月を迎えていて、 とにかく時間がない。 そこで、 言語研究をすることは諦め、 年明けから半年以上頑張ってきた言語学オリンピックそのものをテーマにすることにした。
 当初の予定から変わったため、 八月に論文執筆を再開した当初は、 「その場しのぎで追い込まれて選んでしまったテーマ」 という感覚もあった。 しかし、 テーマを変えたからこそ取り組むことになった言語学オリンピックの問題作成は、 難易度が高いながらもやりがいがあり、 日々取り組んでいくうちに、 どんどん楽しくなっていった。 自分の書きたいことを書き連ねていったところ、 かなりのページ数の論文となり、 書き終わった時には、 大きな達成感を感じることができた。 しかし、 論文を周りの人に読んでもらうと、 言語学オリンピックを一緒に勉強している仲間の中では常識として扱われているような前提知識がないことから、 理解してもらえない部分が沢山あり、 多くの補足説明が必要なことが分かった。 そこで、 なるべく論理の飛躍がないよう、 出来る限りの補足説明を入れ、 読みやすくする作業を続けた。 完成までの間に、 何度も校正を重ねた。
 論文を作る過程はとても大変で、 「言語学オリンピック」 をテーマとして作った作品の完成度には満足していたが、 最初に自分が 「すごいこと」 をしたいと、 目指していた内容からはかけ離れているように感じ、 もう少し何か出来たのではないかと少し残念だった。 そのため、 もちろん賞を期待することなく、 労作展当日を迎えた。
 当日教室に行って本当に驚いた。 自分の作品に、 ずっと憧れていた 「賞」 の紙がついていた。 全く期待していなかった分とても嬉しかった。 クラスメイトからも 「すごいな」 と数多くの言葉をかけてもらった。 趣味の延長線上にある言語学オリンピックは、 自分では 「大したことでない」 と思っていたが、 大したことでないことでも、 時間をかけて努力を積み重ねれば、 周りから見ると 「すごいこと」 になる、 というのは大きな発見だった。 自分が今まで思い描いていた 「すごいこと」 は、 もしかしたら、 どれも自分のレベルでは到底到達できないような夢だったのかもしれない。 今回を機に、 今後は、 自分では 「大したことない」 と思うようなことでも、 興味を持ったことには、 全力で取り組もうと思った。