労作展

2023年度労作展 受賞作品

英語科

失敗からの成功

2年K.J.君

  「失敗で始まり成功で終わった」 私の今回の労作展を一言で表すときにこれほど適切な言葉はないだろう。 実際そうなのだ。
 入学してから二回目を迎えた労作展。 前年は社会科で地方空港についての論文を出品したが賞は逃してしまった。 先生からも修正点を教えて頂きさあ次に活かそう、 今年は何をやろうかと悩むが決めたのはゴールデンウィーク。 科目決めの寸前だ。 去年の九月から今年まで何をしていたのか、 そんな質問を自分にぶつけていても仕方がない。 選んだ教科は英語。 元々得意だった科目であり、 前年とは何か違うことに挑戦してみたいという自分の気持ちも決めた理由の一つだ。 英語という科目を選ぶとまず一つの枝分かれにさしかかる。 そもそも英語の何について取り組むかだ。 和訳、 英訳、 英語を使って何かを紹介するなど例を挙げるとキリがない。 しかし、 元々自分の心は和訳に決まっていた。 今の自分の英語力を自己分析してみると、 リスニングやリーディングはある程度できているがスピーキングやライティングはまだまだ全然ダメ、 という結論に落ち着いた。 なので和訳をしたという訳だが、 和訳をする上で私は 「自分がいかに作業を楽しめるか」 に重きを置いた。 一夏をかけて努力するにはそれなりの覚悟がいるのでモチベーションが下がるような本はさけたい。 そこである本に出会った。 それは映画・ダイハードの原作となった小説 「Nothing Lasts Forever」 である。 私の中でも五本の指に入る名作のもととなった小説ということで作業が楽しめるのは間違いなし。 早速作業に取りかかった。 初めは休みが始まったことも相まってやる気は最高潮。 まずは訳し、 わからない単語を調べリストアップ。 しかし高齢である主人公が回想ばかりをして一向に話が進まない。 全体二百四十ページ中二十ページが進んだ時についに限界を感じ、 父が偶然薦めてくれたマシュー・ライリー著 「Hell Island」 へと鞍替え。 百二十ページ余りで話の進行が早そうであるというのが選んだ理由だ。 取り組み始めたのは七月下旬。 残りは一ヶ月少し。 少し後悔したが 「失敗」 がなければ本に出会わなかったので切り替えた。 あまり時間がないこともあり、 とにかくテンポよく進めることを心がけた。 わからない単語は辞書で調べリストアップ、 それでもわからないものは英文のまま書き前後の文脈から推測。 といった具合に初めから完璧を目指すよりも高速で進めた方が展開も飲み込めるのでとにかく進めた。 一通り訳したのが八月下旬。 まだまだ欠陥だらけなので修正を進める。 一回読むと登場人物の相関関係が色々とわかってくるのでセリフや語尾、 不明だった単語の意味が理解できるようになり磨きがかかる。 例えば、 文中に出てくる副官の女性兵士はタフで上官と信頼し合っていることが読み取れたので部下ではあるが敬語でセリフを訳さない、 上官が部下に呼びかけるときにわざわざいちいち部隊名を言わせない等細かな部分をブラッシュアップした。
  「翻訳は過程が大事だ」 そう英語の説明会で言われた言葉を頭に叩き込んでいた私は今述べたような考察を全てまとめ制作日誌に記録し、 充実させた。 和訳したものは何十回、 何百回と見直した。 見直しすぎてページをめくる前に次のストーリーがどうなのか記憶してしまったほどである。
 そういった地道な作業を繰り返しているうちにいよいよ提出日がやってくる。 どう評価されるか楽しみである反面、 まだまだやり残した部分がないか探す自分がいる。 誤字はないか、 ページ飛ばしはないか。 脳の中を無数の?ハテナが飛び交っている中再び自分の作品と対面する労作展当日がやってきた。 時がたつのは早い。
 おそるおそる作品とにらめっこするとなんと賞の札が。 あまりの嬉しさにしばらく放心状態になってしまった。 はじめはつまづいてしまい 「失敗」 したが、 素早く切り替え地道な作業をくりかえし 「成功」 という名の努力の実がみのった。 その実は私の夏休みの必死の努力、 つまり汗の結晶だ。 どれほどしょっぱいのだろうか。 ただ私にとって最も嬉しい瞬間の一つであることに変わりはない。