労作展

2023年度労作展 受賞作品

技術家庭科

力との闘い

3年M.E.君

 普通部最後の労作展。 一年次は自分へのプレッシャーだった労作展も、 いつの間にか試行錯誤を繰り返したその先の景
色を見たいという楽しみに変わっていた。 僕は、 三年間バッティングマシーンの作製に取り繰んだ。 目標はもちろん 「球速160キロ」 の達成だ。 この三年間の 「力」 との闘いを振り返る。
 中学一号機は空気を押し出す力を使った。 ブロワを使い球に風を当てて球を飛ばした。 最初は全く球が飛ばなかったが、 試行錯誤を積み重ね、 最終的に75㎞/h を記録した。 目標である165キロには遠く及ばないが、 当時はすごく嬉しかったのを今でも鮮明に思い出す。 また、 モノを動かす力の凄さを実感した。
 そして、 中学二号機は一号機の空気を当て続けて加速度を得る発展系として空気を吸い込む力 (密封された空間) を利用した。 真空ポンプを使い砲内を真空にすることで外との気圧の差を作り出す。 その気圧差により生まれる空気を吸い込む力によって球が飛ぶという原理だ。 また、 後端蓋部をラップで巻き、 それを突き破るシンプルな構造にしたことが成功 (後に失敗であった事が分かる) に繋がった。 最終的に105㎞/h を記録した。 また、 真空ポンプのゲージが完全密閉の半分程度にしか達しておらず、 真空度が高められれば160キロを達成できるイメージが湧いた。
 中学三号機も、 二号機と同様空気を吸い込む力を利用した。 二号機で学んだ空気を扱う場合に最も重要になる気密性を高めるために、 蓋の改良にまず取り組んだ。 そして、 二号機の発射方法は見た目も悪いので半自動発射機の開発も行った。 特にバネの動作を考える時、 図で書くことに苦労した。 縮んでいるのか、 伸びているのか、 力がどちらへ動くのか、 工夫しながら考えた。 最終的にシーソーを思い浮かべて、 バネを解放することで動作する方法をとった。 しかし実際に力を解放させる動作についても、 製作が難しくて微妙なバランスを考えさせられた。 力を制御することの難かしさをバネの動作でさらに思い知ることになった。 様々な微調整を加え遂に発射装置が完成した。 蓋については、 二号機の時に使用していた発泡スチロール製のカラーボードが、 真空ポンプによる減圧に耐え切れずに粉砕した。 なので、 アクリル板に変更した。
 これで準備万端。 後は発射するのみだ。 真空ポンプのスイッチオン!メーターは真空到達最大値付近を指している。 これは行けると心の中で思った。 半自動発射装置オン!バネガ縮み、 正確に動作した。 しかし、 蓋は開かず球は飛ばなかった。 蓋にかかる力が想定の何倍も強く、 ドライバーで叩いてもビクともしない圧力だった。 当初はほんの一瞬ショックを与えることで隙間から空気が流れ込んで外れると見込んでいたが、 まったく動かなかった。 相当時間を掛けたことが無駄になってしまったのは悔しいが、 発射方法は半自動発射装置ではなく、 蓋のアクリル板を思いっきり蹴ることにした。 この方法なら確実に160キロを越えられる思い、 労作展三年間の全ての想いを乗せてアクリル板を蹴った。 ボン!凄まじい爆発音と共に放たれた球は家のネットを突き破りそうな勢いだった。 今までとは比べものにならないほどの球威に喜びを通り越し笑ってしまった。 父に協力してもらい、 球速を測ると168㎞/h をマークした。 他では得られないような達成感が込み上げてきた。
 僕の労作展三年間は、 本当に 「力」 との闘いだったと思う。 野球を通じて発想したこの課題に三年間取り組めたことに感謝しつつ、 これからも練習を重ねて、 多くの人を感動させられるプレーを届けられるようにしたいと感じている。 それもまた 「力」 だ!