労作展

2023年度労作展 受賞作品

美術科

フォントの世界

3年N.K.君

 街にあふれる文字。 身の回りの文字。 モノや商品を第一印象を左右する 「フォント」。 僕は普通部での労作展三年間をフォントの研究に費やした。 僕がフォントに興味を持ったのは小学五・六年生の頃。 当時担任であった齋藤佑季先生が ICT 教育の専門家で、 PC を日常的に使用する授業が多く、 「文字表現」 によって受ける印象の違いに関心を抱いた。 これが労作展でフォントをテーマにしようと思った理由だ。 また、 フォントを題材にした作品は自分が訪れた年の労作展にはなく、 オリジナリティという面でも適した題材だと思った。
 一年目。 普通部入学後の六月ごろから漠然とフォントをテーマにしたいと考え、 計画表もその旨で提出したのだが、 どのような作品にするか決めかねて色々迷っていた。 その後、 中間テスト以降に実際に取り組み始め、 ノートに書いていく形式をとった。 この形式では手書きで作っていたこともあり、 うまい感じに作れず形態を考え直した。 次にデジタルで制作することにした。 その際本来の趣旨をもう一度考え直して 「身の回りにあるフォント」 をテーマに作ろうと決めた。 実際に身の回りにあるフォントの実例とそのフォントのまとめを並べて見開きで展示することを考えた。 コラムや文献調べなど様々なことに時間を費やした。 その結果、 賞をいただくことができた。 小学生の時に訪れた労作展では賞を取っている作品はどれも自分には手が届きそうもないハイレベルなものばかりだったので、 とてもうれしい。
 三年目を終えた今から振り返ると一年目は平和なものだった。 なぜなら二年目は母国語である日本語ではなく英語フォントをまとめたからだ。 当初の計画ではシンガポールなどの海外に旅行し、 現地で英語の看板や商品を探す予定だった。 しかし新型コロナウイルスの再流行によって断念せざるを得ず、 日本国内で英語フォントを探した。 意外に街中には英語がたくさんあるもので、 素材はたくさん集まった。 だがその量が多く、 まとめるのに大変な時間がかかった。 最終的に形式は一年生時と同じようなものになったが、 最も進化したのは量だ。 取り上げたフォントの数だけでも一年次の三十三個から七十二個に増えた。 そして二年目も賞をいただけた。 去年ももらったとはいえ、 やはり賞の紙を見た時はうれしかった。
 ここまで日本語、 英語とやってきて三年目。 考えた時に真っ先に浮かんだのは日本語でも英語でもない言語のフォントのまとめだ。 韓国語 (ハングル) やモンゴル語 (キリル文字) などを家族から提案されたが、 どうにも納得できない。 やはり 「自作フォント」 をテーマにしたい。 だが、 一から作るというのは見当もつかなかった。 しかし、 調べ学習を進めるうちに使うソフト、 大枠の作り方などがわかってきた。 Adobe というソフトで図形を組み合わせて枠を作り、 それを塗り絵のように塗ることでフォントを形作くっていった。 最初は Adobe のウェブサイトで見つけた動画を見よう見まねで作り始めた。 参考にした動画ではアルファベットの作り方のみ紹介されていて、 ひらがなやカタカナは文字の設計から全て自分で一つ一つ行った。 白紙に文字のイメージを書くことから始め、 実際に画面上でも何度も何度も試行錯誤を繰り返した。 そうしてついに労作展一週間前にようやく展示物とフォントが完成した。
一、 二年の時と比べても、 作業量、 時間、 制作物の難易度もとても上がった。 だが、 最もうれしかったのは三年連続で賞をいただけたことだ。 普通部に入る前から夢見ていたライオン、 フクロウ、 カメレオンの三つのメダルを揃えることができる。 これはとてもうれしいし、 何と言っても普通部の代名詞である労作展を三年間やり遂げたことの象徴でもある。 このメダルは美術科の國分先生がお作りになったと聞いている。 國分先生には三年間を通じて何度も相談に乗っていただき、 美術科を選んで本当に良かったと思う。 このメダルは受注生産ということで、 まだ手元にないが、 僕の机の上で、 最後の一個をライオンとカメレオンが待っている。