労作展

2023年度労作展 受賞作品

数学科

理想と戦う三年間

3年C.T.君

 将来世の中を変えるモノを作る。 そんな壮大な目標で始まった労作展も、 三回が終わってしまった。 今思い返してみると、 僕の労作展は小学校六年生の時から始まっていたのかも知れない。
 受験期真っ只中だった僕は、 普通部に合格したら労作展で何をするか考えていた。 やるなら将来に繋がることがしたいと思い、 まずは労作展を通して目指す将来的な目標を決めた。 それは、 尊敬するスティーブ・ジョブズの影響で 「将来世の中を変えるモノを作る」 となった。 そして、 自分にとって最も身近で世界を変えられるモノ、 スマホアプリを開発したいと考えた。 次にどんなアプリを作るか、 という妄想が始まり、 それは僕の楽しみの一つとなった。 アプリのテーマは、 祖父母が教師である影響で元々興味があった教育系の、 学習に役立つモノ。 自作した単語帳や問題集、 解説を共有するなど様々な機能が入ったSNSアプリ、 という理想のアプリ像が生まれていった。
 一回目の労作展。 僕は迷わずアプリ開発を選び、 iPhone アプリ開発用のプログラミング言語 Swift で開発を始めた。 書籍でプログラミングの勉強をしたが、 初心者の僕はほとんど理解できなかった。 しかし、 自分で入力したコードで画面が動くという体験が僕をプログラミングの世界へ引き込んだ。 なんとか書籍を一周した後は、 必要な知識をインターネットで学んだ。 そして、 ユーザーが単語などの問題を十問作り、 それを解くことが出来るアプリが完成した。 ベストを尽くした作品だったが、 小六の自分の理想からは程遠かった。
 二回目の労作展。 僕は継続を選び、 春休みから開発を始めた。 まず、 一年で理解しきれなかった Swift の基礎部分を復習した。 その後は他の動画教材で学習し、 プログラミングの技術が向上した。 そして、 問題をファイルに分ける、 問題を解く時間を測るなどの発展した機能を実装することが出来た。
 そして、 最後の労作展。 始めは世界で注目されている AI について学習して何かを作ろうと思っていたが、 理想の学習アプリ開発を諦めることはできなかった。 今回のテーマは昨年の反省、 そして原点となる小六の時の理想を反映して 「データ保管と協働学習機能」 に決めた。 昨年のアプリはアプリを閉じると入力した問題データが消えるという致命的な欠陥があったため、 クラウドでのデータ保管を目指した。 また、 協働学習とは生徒同士が協力しながら一つのテーマに向き合うことで、 テスト勉強に役立つ問題を共有できるアプリという小六の理想を上手く言語化していた。
 春休みには、 インターネットでクラウド利用のコードを学んだ。 僕は Fire base というオンラインクラウドを利用したが、 Swift と併用する人が少ないため関連するウェブサイトが少なく、 学習はとても大変だった。 春には、 投稿した問題を共有するというアプリの根幹の部分が完成した。
 最後の夏休み、 部会以外のほとんどの時間を割いて、 理想の機能を実装していった。 ユーザーの視点から 「欲しい」 機能を考え、 それを実現するコードを考えたり調べたりして、 成功するまで何度も試す。 そして、 僕は一人でアプリを完成させることが出来た。 今回作った機能は、 ユーザー間の問題共有、 フレンド機能、 投稿された問題の検索機能や、 いいね・コメント機能など他にも山程ある。
 今回の労作展では、 小六の自分の理想を上回る様な作品が完成した。 小六の時には実現するなんて全く思っていなかったが、 三年間の労作展でそこに達することが出来た。 大きすぎると思っていた理想や目標も、 少しずつ取り組めば実現するという自信が、 労作展の経験から生まれた。 その経験を生かして、 「将来世の中を変えるモノを作る」 という目標にも一歩ずつ近づいていきたい。