労作展

2022年度労作展 受賞作品

美術科

福沢先生と僕

3年I.Y君

 今年も労作展が終わった。昨年までは労作展が終わった瞬間に来年の作品を何にしようかと考えるのが楽しみだった。来年はどんなことに挑戦しようかなと考えながら、ほかのみんなの作品を見て回っていた。今年も来年作品を作るとしたらどういうものにしようかなと漠然と考えていたが、その必要がないということを思い出して少し寂しい気持ちになった。三年間を振り返ってみて、僕にとって労作展がどのような意義があったのか考えてみた。
 一年生の時は、「僕の好きな偉人百人一首」を作った。過去の多くの偉人の中から僕が特に興味を持った偉人を百人選んで、その人の業績などを五七五七七の歌の形にまとめて、百人一首のようなカルタを作ることにした。過去の偉人の業績を調べただけでなく、業績について理解を深めることができた。
 二年生の時は、タイルアートに挑戦した。「僕の好きな偉人百人一首」の中のひとりである徳川吉宗が僕の一番好きな動物である象と関わりがあることを知ったので、その物語をタイルアートで表現した。像を立体的に表現することは作業工程が膨大であり、タイルを割って貼るという地道な作業が毎日続いた。力とコツも必要で途中で何度かくじけそうになった。果てしない作業が続くように見えたが、こつこつと積み上げていけば完成までたどり着くことができるということを学んだ。
 三年生の今年も「僕の好きな偉人百人一首」の中から一人を選ぶことにした。労作展最後の年なのでもちろん福沢先生にした。いろいろと調べていく中で、福沢先生が詠んだ漢詩に、「花を惜しむ」というものがあることを知った。福沢先生は、たいへん忙しく働いてきたために、お花見などしている時間がなかったということを残念に思っているという内容のものだった。そこで、切り絵の中で福沢先生にお花見をしていただくとともに、僕の普通部での取り組みを重ね合わせるようなイメージの作品を作ることにした。
 また、僕は福沢先生の言葉の中で、「努力は天命さえも変える」という言葉がとても好きである。あることに一生懸命取り組んでいると、身に備わってしまって変えようにも代えられない運命さえも変えることができるという意味である。それとともに、努力を惜しんではいけないという戒めの言葉でもあると思う。この言葉も切り絵で表現したいと思った。
 福沢先生の業績はいうまでもなく素晴らしいものであり、僕の普通部での取り組みはとても小さな物かもしれないが、今の僕にとっては大切な思い出である。切り絵の中で福沢先生と僕の普通部での取り組みを一緒に表現することができて嬉しかった。切り絵は細かな作業の連続であり、とても多くの時間を費やしたが、自分のイメージしたとおりの作品に仕上げることができた。
 三回の労作展を経験して身に染みて感じたのは、努力を惜しんではいけないということである。カルタ作り、タイルアート、切り絵、いずれも自分にとって初めての取り組みであり、途中で思いもかけない障害にぶつかることが何度もあった。その時に、簡単な方向へと進むのではなく、努力を惜しまずに障害を乗り越えていくときに大きな喜びや達成感があることを学んだ。達成感を味わった後はまた新しいスタートラインに立つことができる。その繰り返しを経て自分にとってかけがえのないものを見つけていきたい。普通部を卒業した後も、労作展での経験を忘れないようにしようと思う。